1月10日付けのフィナンシャル・タイムズ紙社説‘Donald Trump’s careless talk’が、グリーンランドやパナマ運河の支配権を得るために軍事的あるいは経済的強制力を行使する可能性を示唆する最近のトランプの発言は、プーチンや習近平の力による現状変更の主張と軌を一にするもので、同盟国を不安に陥れている、と論じている。要旨は次の通り

ホワイトハウスに戻る前から、ドナルド・トランプは、その2期目がいかに破壊的なものになるかを示した。トランプは、グリーンランドとパナマ運河を米国が支配するために武力行使の可能性を排除せず、カナダには「経済力」によって米国の51番目の州になるよう説得する可能性を示唆した。新たな拡張主義のレトリックは 、米国の同盟国を不安にさせている。
米国がグリーンランド買収を示唆すること自体は馬鹿げた主張ではない。グリーンランドの魅力は、鉱物資源と温暖化により利用可能となる北極航路と天然資源に近いという戦略的立地を含む。しかし、グリーンランドの将来を決め、適切な合意を交渉するのは、グリーンランドの人々だ。
グリーンランドや他の隣国または同盟国の領土を奪うために、軍事的、経済的強制力を行使することをトランプが気軽に考えるのは、危険で誤っている。それは、プーチンがウクライナの支配権を奪還しようとする軍事的努力、あるいは習近平の中国による台湾への潜在的な動きを耐え難い国際法違反であるとする西側諸国の主張を台無しにする危険がある。それは、米国とその同盟国は自らの利益のために武力を正当化する時には冷笑的にその言説を変えるのだ、というグローバル・サウスの見方を裏付けるものとなる。
グリーンランドについてのデンマークの主権やパナマ運河についてパナマの主権を認める条約に調印していながら、米国政府がそのような約束にもはや拘束されないということを示すことは、他の諸国にも同様の決定をする口実を与えることになる。トランプの発言は、大国は小国の将来を決めることができるという「強者のルール」への回帰を暗示するものであり、トランプは領土分割に前向きかもしれないという考えを、ロシアや中国の指導者たちに植え付ける危険性をはらんでいる。
トランプの支持者たちは、このような警鐘を鳴らすことは心配し過ぎであり、彼は、単に自分の支持層を楽しませ、または相手側を挑発するために、思いつきで発言しただけなのだと言うかもしれない。また彼らは、外国の指導者たちは、トランプの意識の流れを読みすぎないようにと心得ていると付言するかもしれない。