2024年7月21日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年1月14日

『2023.11.11~12.28 47日間 総費用22万円(航空券8万7000円含む)』

財政破綻から対外債務不履行に陥るとはどういうことなのか?

コロンボ港近くのビーチ沿いに林立する高層ホテル。35年前には筆者が逗留した3階建ての英国コロニアル様式のホテルがポツンと一軒家だった。まさに隔世の感あり

 スリランカは経済不振から国家財政が破綻。2022年4月に対外債務不履行(デフォルト)となった。そして、同年7月には経済的困窮を訴える民衆が大規模デモを行い、大統領公邸を占拠した。大統領一族は国外逃亡。それから約1年半後の時期に筆者は1カ月半スリランカを周遊したことになる。

 怠け者の筆者は、事前に訪問国について調べることは一切しない。『地球の歩き方』(Gakken)ですらビザの取得方法と電気のプラグ型式以外は見ない。お陰様で訪問期間はスリランカが雨期であることも、現地到着後1週間経ってからやっと気づいた次第。さすがにスリランカが中国の債務の罠によりデフォルトに陥ったことはニュース等でぼんやりと知っていたが。

 筆者は二十数年前にエリツイン政権末期から、プーチン政権初期の期間に債権回収目的で再三モスクワに出張した。債務不履行に陥り、財政破綻の最中だった。当時のモスクワは乞食が地下道に溢れ、インフレで年金生活が破綻した老人が書画骨董・古本・旧式家電や果ては子猫まで家中の売れそうなモノを地べたに並べて小銭を稼いでいた。公共バスや地下鉄・近郊列車のなかでも乞食や物売りがひっきりなしに声を掛けてくる。そして裏道では警官が難癖をつけて外国人旅行者から数十ドルを巻き上げていた。

 印象深いのは晩夏の夕暮れ時の公園で同僚と缶ビールを飲みながらくつろいでいた時のこと。飲み終わったアルミの空き缶を屑籠に入れた途端に数人の老人が物陰から飛び出してきて、我々が投げ捨てた数本のアルミ缶の奪い合いを始めた。アルミ缶を集めて僅かながらの小銭を得るために必死の形相で争っていたのだ。

 そんなロシアでの見聞からスリランカの日常生活の現状にどんな変化が起こっているのか興味を抱いてコロンボ国際空港に降り立った。

ビザ手数料と為替レート、コロンボ空港での違和感

 空港で先ず30日間の観光ビザを取得。持参した2017年版の『地球の歩き方』では$35だったが現在は$50である。出発前のネット情報では欧米日本などの観光客誘致のためビザ手数料を免除する閣議決定がなされたとあったが、まだ実施されていなかった。

 さらに翌日市内の入国管理事務所で観光ビザ1カ月延長手続きをしたら、手数料は100ドル。財政破綻国家の“先ずは取れるところから外貨を稼ぐ”という意図を感じた。

 イミグレを通過すると両替である。ちなみに日本円との交換レートは2015年10月時点で1円=0.85ルピー、つまり1万円=8500ルピー。ところが2023年11月12日の空港での両替は1万円=2万1600ルピー。1カ月半の滞在期間中は、1万円=2万1000~2万2000ルピーの間で上下していた。

 過去8年でスリランカの通貨価値は対円レートで60%も下落したことになる。日本円が対ドルで過去8年間に118円から150円に下落、つまり20数%下落しているのでスリランカでは、過去5年間でインフレが急速に進行したのであろうと推測した。(※注)本稿では読者が理解しやすいように現地通貨の値段・価格をすべて1ルピー=0.5円で換算して日本円で表示する。

あっけないくらいフツウのコロンボ市内

 翌11月13日から数日間コロンボ市内を歩いたが、二十数年前のロシアと異なり、通常の途上国の首都という雰囲気。当時のモスクワでは商店にほとんど商品がなかったが、コロンボの商店街や市場には生活物資が溢れていた。物乞いはいるものの、インドのニューデリーと変わらない程度。しかしこの一見して平穏な日常生活は表面的なものであり、実際の庶民の生活の実相は全く異なるものであることを後々知ることになった。

 唯一インフレの激しさを物語っていたのが、国鉄の切符売り場の運賃表の看板。行き先別に等級ごとに運賃が表示されているはずが、運賃欄はボール紙で覆われていた。代わりに窓口の脇に張り紙で運賃が記載されていた。コロンボから列車で5時間のアヌラーダプラまでの3等運賃は8年前の一等指定席よりも高くなっていた。つまり3倍以上の値上げだ。さらにどこのレストランでも壁に大書されているメニューの値段は消されており、A4サイズに印刷されたメニューに値段が手書きされているケースが多かった。

35年前とは様変わりしたコロンボ市街地

 筆者は35年前に2週間ほど出張でコロンボを訪れている。当時はタミル人の過激組織である“タミルの虎”によりスリランカ北東部では内戦状態が続いていたが、コロンボ市内は高層ビルがまったくない旧英国植民地時代の古びた建物が並ぶ落ち着いた街並みであった。

中国の融資で拡張されたコロンボ港コンテナターミナル。現在も地元業者により拡張工事は継続中(手前部分)

 今回はコロンボ市内に高層ビルが林立して、すっかり近代都市になっていることに驚いた。鄙びたコロンボ港も、中国による拡張工事でガントリークレーンが林立するコンテナヤードや大型客船桟橋など様変わりだ。コロンボ港近くでは中国の建設会社により高速道路、ホテル・アパート・商業施設が入る複合高層ビルなどの建設が進められていた。「首鋼建設」「雲南建設」「中国鉄建」「中国土木」などの漢字で標記された看板が高々と掲げられているので一目瞭然だ。スリランカ人作業員の安全帽や作業服にも漢字の建設会社のロゴが。

 大の親日派であるヒルトンホテルの支配人氏は「コロンボ市内の高層ビルの大半は中国の投資・融資で建設されたものだ。コロンボのランドマークとなっているTV塔のロータス・タワーも中国の融資で建てられた」と苦々しく語った。故安倍首相一行をヒルトンホテルが接遇したことは誇りだと語り、ヒルトンホテルが中国系ホテルに囲まれている現状を嘆いた。

150円でも庶民の足である三輪タクシー運転手にとっては死活問題

 コロンボから3等車で5時間、世界遺産の古代仏教遺跡があるアヌラーダプラ駅に到着。ホテル検索アプリで最安値だが、清潔そうなゲストハウスを予約していた。駅から宿まで約6キロ。歩けない距離ではないが雨が、降りそうなので声を掛けてきた三輪車タクシーの運転手と交渉。ガタイの良い運ちゃんはガソリン代が高騰しているとして250円を提示。ガソリン価格はコロンボ市内で一般にリッターあたり200円弱であったのでさして高くない。

 提示の半額の125円でカウンター。運ちゃんは道が悪いとか遠回りで実際は8キロ以上だとかあれやこれやと理屈をつけて250円を堅持。面倒なので歩き出すと200円に値下げ。グーグルマップでは舗装された幹線道から数百メートル田舎道に入ったところなので放浪ジジイは150円を最終提示して歩き続ける。駅前では十数台の三輪タクシーが客待ちしているので運ちゃんはしぶしぶ150円を受諾。

 道すがら運ちゃんと話していると英語もまあまあ話せるし、頭の回転が速い御仁であった。この後のスリランカでの1カ月半の経験から筆者はこの距離で150円はローカルの相場より若干高いレベルであることが分かった。何しろ公立小中学校の教師の月給がおよそ2万円、重労働の紅茶農園の茶摘み女の日給が500円である。数十分で150円の現金を得ることは運ちゃんにとり僥倖なのだ。

アジア開発銀行の融資で高速道路に繋がるマリタイム・サービス・センター建設が進行中。中国系の中国鉄建設と中国土木が請け負っている。手前の赤い三輪車がスリランカ庶民の足である三輪車タクシー(スリーホイーラー)

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