2024年5月17日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年1月14日

ゲストハウスは看板もない普通の民家

アヌラーダプラの家族経営の民宿のテラスでオーナーのお母さん手作りのカレーライスセットの朝食を頂く

 グーグルマップで示された目的地に到着したが、ジャングルの中に普通の民家が散在しているだけ。運ちゃんが周辺で宿の所在を聞くが誰もが知らない。運ちゃんが宿に電話して位置を確認してやっと到着。看板も何も出ていない大きな庭のある民家だ。マネージャー役のオーナーの息子の青年によると最近民宿を始めたばかりで看板もまだ準備できていないとのこと。

 運ちゃんにお金を渡したが、運ちゃんは帰らない。何やら宿のマネージャー青年と話し込んでいる。後で青年に聞いたら運ちゃん自身も副業として民宿を検討しており色々と質問していたのだという。

完全ファミリー経営の民宿の採算は?

 宿は大きな平屋の一軒家だ。洋間にベッドを3台置いたメインルームはファミリー客専用。放浪ジジイが泊まったのは洋間にベッドを2台置いた相部屋。残りの部屋はオーナー家族の居間・台所・寝室である。

 ここに4泊したが、メインルームはスリランカ人とインド人の家族がそれぞれ1泊しただけ。放浪ジジイの部屋は1泊1人500円弱。相方がなく4泊お1人様で占有。部屋稼働率は良くても2割程度らしいが2部屋を民泊にすることで得られる現金収入に満足しているようだ。

 宿のオーナーは56歳。下級公務員らしいが休日は自ら車や庭の手入れに余念がない。オーナーの奥さんも町で仕事をしており古いミニバイクに夫婦で乗って朝早く出勤して夕方遅く帰宅する。マネージャー役の息子の青年は25歳で本業は父親が保有する日本製中古乗用車を運転して観光案内や近隣のホテル宿泊客の送迎などを請け負っている。

 オーナーの娘は16歳の学生で部屋の掃除担当。お客の食事やお茶はオーナーの75歳の母親の担当。完全なファミリービジネスである。マネージャー青年によると経済が破綻してから庶民は何か副業をしないと生活が成り立たないという。

南京出身の公園・庭園デザイナーの女性とセイロンティーを楽しむ著者。手前の下を向いている男性は北京出身でハーバード大学大学院数学の博士課程

町外れに多い安宿、副業の民宿でサラリーを補う公務員や教員

 今回、さまざまな宿に泊まったが基本的に地域最安値を狙っていたので必然的に観光名所やバスターミナルのある中心街から離れたいわゆる民宿が多かった。経済破綻によりインフレが進行、他方で財政難で公務員などの公的セクターの職員の給与は据え置き。民間企業も経済停滞のため給与は据え置き。そのため空いている部屋を民宿にして現金収入を補完したいという背景があるようだ。

 ハンバントタの宿も看板もなく3階建ての屋敷に12部屋あり全体を民宿にしていた。4泊したがこの間ゲストは筆者のみ。オーナー一家は近くの小さな平屋に住みオーナーは朝から晩まで町で仕事をしていた。民宿の管理は屋敷の隣家の失業青年に任せっきり。

 ビーチリゾートのメリッサの公立学校の体育教師は2004年の大津波で自宅が流失。銀行から借金して安全な場所に2階建ての家を新築。学校の給与は2万5000円余り。給与の半分近くは銀行への返済に消える。2階のバルコニー付きの贅沢な仕様の2部屋を民宿にしている。「昨年の冬場はロシア人家族が長期滞在して助かったが、今年は年末に1組の数日間の予約があるだけだ」と嘆いた。

昼下がりのメリッサビーチ

以上 第2回に続く

   
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