作業機メーカー大手のスガノ農機(北海道空知郡)代表取締役社長の菅野充八氏もこう語る。「これからの日本の食を救うのはプロ農家にかかっており、彼らは乾田直播など、新たな農法を模索しているのにメーカーは彼らの求めるニーズに応え切れていない。今後は、農機を一般消費財としてではなく、生産財として捉えて販売するべきだ」。
農業の発展には農機の発展が不可欠
このように、農機メーカーとプロ農家には意見の〝ねじれ〟が存在しているが、プロ農家のニーズをメーカーが満たしていないのは間違いないだろう。
だが、農機メーカーは、日本の複雑な気候・地形に対応し、使いやすさを追求した製品開発技術を武器にプロ農家の発展の期待を担う存在でもある。日本の農業については、補助金や高米価維持政策などによる高コスト体質の問題点が盛んに議論されてきたが、そうした構図の中で農機メーカーも潤うとともに様々な技術を培ってきたことは否めない。
だが、「日本の農業は官営農業と言われ続けてきたが、昨今、プロ農家の誕生によって、日本の農政は大きな曲がり角を迎えている」(国際食料・農業貿易政策協議会理事の白岩宏氏)とされ、かつてないほどに農業の構造転換が迫られる今、欧米勢にはつくれない技術力を蓄えた農機メーカーにはプロ向けの製品開発が期待されているのだ。それは、農機メーカーにとっても、己の命運を握ることになるかもしれない。ある輸入農機販売会社幹部は「欧米では、80年代に国の政策が主業農家を育てる政策にシフトした結果、プロ農家が求める技術水準に応え切れないメーカーは一気に淘汰された。今後は日本でも同じことが起こりかねないのでは」と予測する。
アジア市場で活況を呈する日本の農機メーカー。だが、その足元で起きていることに、我々はもっと目を向ける必要がある。
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