Wedge REPORT

2009年9月25日

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 経済が低成長時代に入り、国際競争が激化するなか、選挙対策でどうしても近視眼的にならざるを得ない政治家に、長期的視点から煙たいことを言う官僚がいなくなれば、国益は大きく失われます。官僚の最大の問題は、政治的調整ばかりに時間をとられ、専門性を磨く暇がなくなったことにあります。

 官僚が能力を失っても、民間から引っ張ってくればよいという意見もあります。しかし、消費者庁の人事を取り上げるまでもなく、給料の問題や、日本郵政の西川善文社長の解任騒動があって、民間から連れてくるのは難しくなっています。

 安倍政権から麻生政権にかけて内閣府大臣官房審議官を務めた湯元健治・日本綜合研究所理事は「民間人にとって官のポストは相当リスクがあり、よほどの志がなければ行くのは難しい」と言います。シンガポールのように、1億円積まないと有能な人材を確保できないとなれば、コストも跳ね上がります。

 だからこそ、いまから時間をかけて官僚の意識を改革していかなければなりません。そのためには、公募制導入や選考・審査プロセスの透明化で、一部の省庁や政治家のためではなく、国民のための政策を立案するよう、官僚を動機づけることが必要です。このような、票にはなりにくい制度改革に、腰を据えて民主党が取り組むかどうかが日本の将来を分ける分水嶺となるでしょう。

 政治家の能力向上も、公務員制度の再構築も、一朝一夕にはできません。諸外国の例をみても、定着には少なくとも10年はかかります。

 民主党がこれらの面倒なことを放置すれば、結局、厳しい国際情勢や経済状況に対応できず、政策実行が遅れ、国民から批判を浴びることになるでしょう。そうなったとき、また官僚のせいにするのでしょうか。

 もうすでに官僚の士気低下は目を覆うばかりになっています。代わりとなる制度を構築せずに、天下りを禁止したことも大きな要因です。以前なら50代の審議官クラスから肩たたき(退職勧奨)を行い、天下りで組織の外に出すことでヒエラルキー組織の新陳代謝を図っていましたが、それが突円できなくなりました。昨年度から専門スタッフ職という職群が設定され、外に出せなくなった官僚に、給料を下げる形で仕事を与え、本省内で抱え込む仕組みが始まっています。

 とはいえ実態は、「専門スタッフ職は部下も仕事もなくまさに窓際。ああいう将来を見せつけられるのは辛い」(中堅官僚)という有り様です。これまで続けてきた人事制度の出口を変えるのなら、当然、人事制度そのものも見直さなければならないはずです。

 村山内閣から小泉内閣まで官房副長官を務めた古川貞二郎氏は、「年次主義から能力主義への移行は当然。またキャリアでも政策推進を得意とする将来の次官・局長候補には難しいポストを数多く経験させる一方、分析力が優れた者には調査・研究などのポストでじっくり経験を積ませる複線型人事を、入省5~6年目から導入する必要がある」と言います。

 「会計検査院や公正取引委員会、証券取引等監視委員会などの監視部門はまだ人が足りない。そういう有意義な仕事に人を振り向ければよい」(塩川正十郎・元財務大臣)との指摘もよく理解できます。対策が不十分なまま出口だけを絞れば、組織が沈滞するのは当然です。

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