Wedge REPORT

2009年9月25日

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 「40代、50代になっても深夜残業が当たり前の課長補佐ポストなんて、身体がもたない」(財務省官僚)、「今でも入省4~5年目のレベルの仕事をずっとやり続けている。これ以上、上の人が増えれば、当然、意思決定も遅くなりストレスも増える」(総務省官僚)、「その上、4年後からは定年が60歳から65歳制になる。一体どうなるのだろうか」(内閣府官僚)・・・。これらの声を無視してよいものでしょうか。

対立の図式で官を壊死させるな

 こういう状況に、「官僚憎し」を掲げる、浅はかな議員が、進駐軍気取りで乗り込んできたらどうなるでしょうか。「政と官の信頼関係を構築し、官僚を総動員しなければ良い政治はできない」(石原氏)。

 民主党がマニフェストで掲げた「国家公務員総人件費2割削減」が暗い影を落としています。本当に公務員の人件費は、2割下げなければならないほど、高すぎるのでしょうか。ムードだけでそんなことをすれば、モチベーション低下を招くだけでしょう。

 そもそも、労働基本権を与えてリストラをするという発想は、マニフェストの最大の矛盾点です。「官僚憎し」でとにかく民間と同じ条件にすればリストラできると考える原理主義議員と、悲願の基本権付与を達成したい労働組合関係議員の同床異夢になっています。

 経営者たる政治家はころころ代わり、人件費は予算だから国会に縛られる。使用者に当事者能力がない上に、労働組合には組織が潰れるかもしれないという危機感がない。労働基本権を与えれば、そんな労使が交渉で労働条件を決めることになるわけですが、それでなぜ2割削減できるのでしょうか。

 これから政権交代が繰り返されることになれば、徐々に官僚は党派性を強めていくことになるでしょう。あの次官は民主党系で、あの局長は自民党系、というように。政治家と官僚が一緒になって政争に明け暮れることになる前に、「党派性よりも専門性」を明確にした公務員制度の設計に急ぎ取り組む必要があります。

 代替する集団がいないのに、これまで唯一の政策立案集団だった官僚組織を官僚たたきで壊死させれば、再構築には多大なコストがかかります。そうなってから、諸外国と比較して少人数かつ低コストで、それなりに優秀だった官僚組織を懐かしんでも遅いのです。民主党が「政と官の問題」に対し、パフォーマンスを脱して、真摯に取り組んでくれることを切に願います。

 WEDGE2009年10月号では、「政と官の問題」により多面的に切り込んだ特集を展開しています。あるべき公務員制度改革を示した、田中秀明・一橋大学経済研究所准教授の「官僚の専門性を高める具体策」と、戦前の政官関係の変遷から導かれる教訓を論述した清水唯一朗・慶應義塾大学総合政策学部専任講師の「政のかたち 官のすがた――政治主導の政治史」をぜひご覧ください。

◆「WEDGE」2009年10月号

 

 
 

 

(関連記事)「天下り禁止と人件費2割削減だけでいいの?」(2010年7月10日)
(関連記事)「官僚たたきはもうやめよう」(2009年3月20日)

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