北朝鮮ミサイルへの対応が新たな難題に
北朝鮮は9月14日、10月10日の朝鮮労働党創建70周年に合わせた弾道ミサイル発射を示唆した。北朝鮮は「衛星打ち上げ」と主張するが、「いかなる弾道ミサイル技術を使用した発射」をも禁じた国連安全保障理事会決議への明白な違反であり、重大な挑発行為といえる。
朴大統領は訪中後、対北政策でも中国との協力を深めていこうとする姿勢を鮮明にしている。北朝鮮のミサイル発射への対応は、中国との協力がどの程度の水準で可能なのかを推し量る試金石となるだろう。
一方で、北朝鮮の核・ミサイル問題は厳然たる安全保障問題であり、日米両国との緊密な協力の必要性を改めて実感させるものでもある。朴大統領は10月16日にはワシントンでオバマ大統領との首脳会談を予定しており、同月末にも日中韓首脳会談が実現すれば、安倍晋三首相との初めての首脳会談も開かれる可能性が高い。朴大統領は、自らの訪中が生んだ日米両国の疑念を払拭するためにも、北朝鮮問題での連携強化を打ち出すことになるはずだ。
朴大統領にとっては、8月下旬の南北合意に基づく対話路線の今後にも直結しかねない大きな問題だ。韓国世論の関心が高い南北離散家族の再会は10月下旬に予定されており、北朝鮮が実際にミサイル発射に踏み切れば韓国は難しい立場に立たされることになる。離散家族再会は人道問題だと主張してきた手前、韓国側から打ち切るのは難しいからだ。
離散家族再会は韓国世論の関心が高く、ミサイル発射とは無関係に進めるべきだという意見が強く出るだろうが、何事もなかったかのように進めることへの異論も出る可能性が高い。そうなると、北朝鮮問題での定番とも言える「韓国内での激しい意見対立」が生まれかねない。
韓国政府当局者は「韓国としては人道問題だから淡々と進める。でも、ミサイル発射には厳しい対応を取るから、それに反発する北朝鮮側が打ち切ると言い出すかもしれない」と語る。聞きようによっては、そうなれば離散家族再会が実現しない責任を北朝鮮に押しつけられるから、できればそうなってほしいという願望にも聞こえる。
韓国の民間調査機関、リアルメーターが9月7日に発表した世論調査によると、朴大統領の支持率は昨年11月末以来、初めて50%台を回復して50・7%になった。訪中の成果が評価されたと見られているが、朴槿恵外交の真価が問われるのは、むしろ、これからだろう。
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