「性格も悪い、口も悪い、態度もでかい。そんな自分の行動のせいで野球に戻れんかった。そんな自分を反省するというかね、ちゃんと感謝の気持ちをもってやろうと決めて、開業した」
多額の借金を背負っての開業だったが、経営は順調。そのほとんどを返し終えた。
「形のないものを買ってもらって商売をしている俺にとって、大切なのは人間力だよな。人間力ってのはさ、“危機になったときにどれだけ身を挺せるか”だと思う。“ありがとう”とか“すみません”って言葉の大切さを、身にしみて感じているよ」
6年前、長きにわたる闘病の末、妻は他界した。7回忌を迎えるにあたり、南牟礼は新たな使命を感じている。
「下の子がダウン症で、心臓に穴が空いていてね。だから、障がいを持った方の支援をできないかと考えている」
自らの現役時代、その活躍を支えてくれた恩人は数知れず。今度はそのお返しができないかと、様々な活動を考えている。「野球ができるうちは、なんとかして野球に携わりたい」。
なんだかんだ言って、南牟礼は野球人である。青春のすべて、人生のすべてを賭けてきた野球への思いが消えることはない。学生野球指導資格を取得し、指導者への道も見えてきた。次の夢は、高校野球の監督になることだという。
「野球だけじゃなく、体もみてあげられる。監督、やってみたいねぇ」
野球選手たるもの、ユニフォームを脱いで一個人になったときに、どれだけ魅力的なのかが大事だと力説する。その眼には強い意志を感じ、深い愛がある。
いつの日か、甲子園の勝利監督インタビューで、その軽快な語りを聞いてみたいものだ。きっとその高校の選手たちは、応援してくれる方々への感謝の気持ちを胸に戦うのだろう。
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