その後、事業(数十~100項目)を選んでじっくり議論をする「選択事業仕分け」が中心になっている。この方法だと、滋賀県高島市のように直ちに予算編成に活かしたり(約1割の歳出削減)、権限委譲を行う(新潟県)など、結果を実務に直結できるメリットがある。
政党からも注目され、前回の総選挙時には公明、民主の両党がマニフェストに掲げ、それが「行政改革推進法」や2006年の「骨太の方針」での規定にもつながった。にもかかわらず、官僚と一部国会議員の抵抗により昨年夏まで国の事業仕分けは行われなかった。
こうした中で、昨年8月に自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の中の河野太郎議員チームが、文科、環境、財務、外務(各省ODAを含む)の4省の事業仕分けを構想日本の協力により、「政策棚卸し」として行った。構想日本にとっても国の事業仕分けは初体験だったため、教師、NPO、研究者など4省の事業の現場の実態を知っている人を中心に、合わせて150人ほどから予め話を聞いた。全国にスタッフを遣り、時間も費用も大いにかかったが、有益な現場情報が得られ、大変勉強になった。以下4省の中で最も大きな事業官庁である文科省事業の議論をご紹介しよう。
文科省のこんな事業 要る、要らない?
文科省の事業に「豊かな体験活動推進事業」(事業費10億円)がある。モデル校を指定して、自然の中での集団宿泊体験活動などを通して子供の豊かな人間性や社会性を育むことを目的としており、その成果を全国に普及していこうという事業だ。これに対して、仕分け人から以下のような指摘があった。
「事業費10億円のうち6.6億円ものお金がバス代と宿泊代に使われている。このような事業を全額国の負担で全国展開できるわけがない。結局モデルの期限(概ね3年)が終わればそれっきりになる」
「文科省は『1週間農村に泊まる』ことを推進しているが、農家には1泊だけで修学旅行と変わらない」
「モデル事業の結果、全国展開した例はない。モデル事業自体が目的化している。さらに、事業の成否の基準も検証もない」
「各地で既に自発的な優れた取り組みも多い。国はそれらをホームページ等により紹介、周知する活動に変えるべきで、今さら国がモデルを示す必要はない」
「現場の感覚として、モデル事業は文科省が言うような呼び水にはならない。むしろ地方への押し付けになっていて、現場の負担になっていることが多い」
現場の実情を踏まえたこのような指摘に対して、文科省から明確な回答は最後までなく、「不要」と仕分けられた。
他のモデル事業についても同様に、効果が確認されないまま、事業を行うこと自体が目的化していることが明らかとなり、モデル事業全般が不要という結果になった。
「道徳教育の総合的推進事業」における「心のノート」という教材の作成、配布事業(事業費4億円)では、使用を義務付けていないのに全小中学校に配布していること、9割の学校で使っているという文科省の認識に対して、民間の副読本で授業をしているところが多く、校長や教師の実感として半分程度の学校で使われていない状況であることなどが判明し、「今のままなら不要」と仕分けられた。