そして、バンコクのカフェブームの火付け役ともいえるのが、「ROAST」(ロースト)グループ。元々は、世界中でコーヒーの買い付けや焙煎を行っていた商社だったが、タイ産のコーヒーを広めたいと立ち上げたのが創業のきっかけとされる。現在、系列を合わせバンコクに3店舗を展開し、さらに拡大中で、その勢いはとどまることを知らない。日本人居住区のスクンビットエリアでも人気を博し、欧米人、富裕層タイ人から確固たる支持を得ている。どの店舗も休日のみならず、平日でも混雑するほどの集客力を有す。
同店の特徴は日本ではすっかりお馴染みだが、イタリアンやビストロ系の一品おつまみから、パスタやハンバーガーといったカフェめしの充実ぶりに加え、スイーツも高いクオリティで提供している点。日本でいえば、内装も含め、都内で複数店舗展開している「WIRED CAFE」のようなイメージだと思ってほしい。
もちろん根幹となるコーヒーに対するこだわりは相当で、タイのコーヒー農家との直接契約や中南米から卸し、独自の仕入れを確立している。エスプレッソの豆は、取材日はタイ農家のシングルオリジン(単一種)とブラジルのブレンドをチョイスできた。また、フレンチプレス(中挽き)のシングルオリジンといったコーヒーもあり、エスプレッソはどの店舗で飲んでもクオリティは変わらず、コクがあり、比較的酸味は抑えられている。無駄に熱いセカンドウェーブ系とのクオリティの違いは明らかだろう。
シグネチャーメニューの「アイスエスプレッソラテ」は、エスプレッソを凍らせて、牛乳に溶け出し、ラテになるというもの。常夏ならではの発想であり、これがなかなか美味。また、同グループでエカマイにある「ROOTS」(ルーツ)は、世界で活躍する高城剛さんといったインフルエンサーにも紹介され、タイでも注目を集めている。
ちなみに同店は、土日のみの12時から18時までの営業というのが、逆に”ブランド好き”なタイ人の優越感をくすぐっているのかもしれない。「ROAST」と違う点は、フードメニューをパンのみにし、コーヒーにこだわっている点。支払いがチップ方式というのも変わっており、コーヒーは100B、手作りパンが50B。こちらの店舗もオープンからクローズまで多くのファンであふれている。
サードウェーブ系のカフェはエカマイ、トンロー、プロンポンといった日本人居住区に集中しながらも、主な客は欧米人や富裕層タイ人というのが実情。タイにいる日本人の多くは、今でも多くがセカンドウェーブがお好みなのかもしれない……。