2024年7月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月21日

 プーチンはハイブリッドな政治戦争で軍事力を使う。中国の南シナ海埋め立てと同様、一発も撃たないでロシアの力を示せる。プーチンはこれで現地の強権的指導者を支持し、米国の支配拡大のためだと考える「カラー革命」に反対し、イランにも米への対抗勢力であると示しうる。プーチンが計算を間違い、米国、その同盟国、イスラエル、米が支援する反対派と軍事的衝突が起きることもありうる。歴史は制限戦争がしばしば深刻な緊張や紛争にエスカレートすることを示している。

 米国はロシアや中国についての考え方を見直す必要がある。両国とも、複雑な政治戦争を行う能力がある。米はそれに対抗すべきである。今のところホワイトハウスは行動しないことを選択しすぎている、と論じています。

出典:Anthony H. Cordesman,‘Russia in Syria: Hybrid Political Warfare’(CSIS, September 23, 2015)
http://csis.org/publication/russia-syria-hybrid-political-warfare


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 この論説は、ロシアがシリアでしていることをコンパクトに紹介しており、参考になります。

 ケリー米国務長官はロシアのシリアでの軍事力拡大問題をラブロフ・ロシア外相との電話会談でも何度も取り上げていますが、ロシア側はISと戦う力があるのはシリア政府軍だけで、アサドは支援に値するなどと述べて、米側の自制要求に応じていません。

 何故ロシアがこういうことをしているのか、正確な動機は分かりませんが、米国に対抗すること、シリアに橋頭堡を築いておくこと、イランとの協力を強化することなど、諸考慮があると思われます。同時にこのロシアの政策は、米国、トルコ、NATO、サウジなどの湾岸諸国、イスラエル、ヨルダンなどとの関係を損なう恐れが大きいです。ロシアがシリア内戦に巻き込まれることがロシアに利益をもたらすか否か疑問に思いますが、ロシアが国際社会の大半およびシリア人の多数がシリアの指導者として見限っているアサドをイランとともに支えると言うのなら、それもロシアの選択です。話し合いで自制させられるものではなく、こういうことには、政治的に、あるいは軍事的に対抗していく以外に方策はありません。

 シリア問題をめぐる米ロ対立は、たとえばロシアの対空兵器で空爆実施中の米軍機が撃墜されたような場合、深刻な紛争になる可能性があります。

 米ロ関係については、ウクライナの問題に加え、この問題が出てきています。そういう中で日本は岸田外相を訪ロさせ、年内のプーチン訪日の実現などを目標にした対ロ外交をしています。日本の抗議を無視して行なわれたメドヴェージェフ首相の択捉訪問の直後に、プーチン訪日準備のための岸田外相の訪露を実施したのは理解しがたく、反発すべき時には反発し、それにできるだけ実効性、持続性を持たせるのが対ロ外交では必要です。軽率な対ロ外交は、北方領土では何らの進展もない中で、対ロ関係でG7の結束を乱し、米国の対日信頼を傷つけるなど、国益に反します。

  
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