この熱き人々

2016年1月31日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 「本当にこうなの? これだけなの? 見えているものだけじゃないよねって、いつも自分に問いを投げかけながら生きてます。昔、東京で一時間刻みのスケジュールを見て、社会から求められているってカン違いしそうになったことがありました。小さな手帳の中の時間割でワクワク感を覚えたり、安心したりしていることに恐怖感を覚えたんです」

 裸の王様になりかけていると気づいた宮本は、1999年に沖縄に家を建てた。自分を安心させるリゾートやホテルではなく、住む場所として沖縄を求めたのである。

 「沖縄本島の玉城村(たまぐすくそん)(現南城市玉城)のアニミズムの根源のような近くです。そこでは自然の壮大さの前にただ生きていることが奇跡のように思える。そんなまったく違う価値観の世界に身を置く。道で出会ったおじいさんに『花がきれいですね』って言うと『花ばっかり見てちゃダメよ。あんた根っこが見えてる?』なんて言われるんです。華やかな、見えるものだけを見ている自分に気づかされるわけ。目に見えていない奥の精神をちゃんと見ているのかと問いかけられる」

 ふと北原白秋の詩の一節が浮かんだ。「真実一路の旅なれど 真実、鈴振り、思い出す」

 沖縄は、宮本にとって大事な原点に引き戻してくれる鈴のような場所なのかもしれない。

 来年早々には、和太鼓の集団「TAO」との出会いが生んだ「百花繚乱 日本ドラム絵巻」のニューヨーク・オフブロードウェーでの公演も決まっている。まさに世界に開く亜細亜(アジア)の門のように、宮本亜門をくぐってさまざまなものが交感し合っていく。

 「いつか古事記を舞台化してみたいという夢もあるんです」

 そんなつぶやきを残した宮本を、待ち望んでいるという言葉を飲み込んで見送った。

(写真:岡本隆史)

宮本亜門(みやもと・あもん)
1958年、東京都生まれ。04年、ブロードウェーでミュージカル「太平洋序曲」を東洋人として初めて演出、同作はトニー賞4部門にノミネートされた。以降、ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎など国内外でジャンルを超えた幅広い作品を手掛けている。

  
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◆「ひととき」2015年11月号より

 

 

 

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