2024年7月18日(木)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2015年12月12日

トランプ攻略法

 これまでのところ、共和党候補はトランプ候補に対処できていないことは明らかです。トランプ候補は、浮上してくるライバル候補を徹底的に叩きます。しかし、同候補が攻撃をしている真の標的は個々の候補者ではなく、「職業政治家」「インサイダー」「エスタブリッシュメント」なのです。

 他方、共和党候補は、トランプ候補を狙い撃ちにしてネガティブキャンペーンを打ちました。第2回共和党テレビ討論会において、ライバル候補たちは同候補の大統領としての資質を突いたのです。ところが、どの戦略をとっても効果が上がりません。同候補が自滅する以外に、まったく打つ手はないという状況になっていたのです。トランプ陣営にとって有利な状況であったのにもかかわらず、トランプ候補は前で述べたイスラム教徒入国全面禁止を求める声明を出したのです。

 その狙いはどこにあるのでしょうか。一言で言えば、キリスト教右派の票の獲得です。イスラム教徒に好感を抱いていない中西部アイオワ州と南部のキリスト教右派の票を狙ったのです。キリスト教右派を支持基盤とするクルーズ陣営とカーソン陣営を切り崩し、両陣営の票を奪い取る意図があるのです。トランプ候補の支持率(36%)に、クルーズ上院議員と元脳神経外科医ベン・カーソン候補のそれぞれの支持率である16%と14%を合わせると66%になり、同候補は過半数を占めることができるのです。

 では、トランプ候補を追う共和党候補は、同候補に対してどのような対策を講じるべきでしょうか。筆者は、メッセージと攻める対象を変える必要があると考えています。トランプ候補を攻撃するのではなく、同候補の周りに吹き荒れる「反職業政治家」「反インサイダー」「反エスタブリッシュメント」の風に焦点を当てて、その勢いを弱めるメッセージを打つことが急務なのです。具体的に述べますと、以下のようなメッセージを発信するべきでしょう。
 

①職業政治家こそ大統領としての資格があり信頼できる

②アウトサイダーではなくインサイダーのプロに政治を任せた方が良い結果を生む

③エスタブリッシュメントが政治の行き詰まりを改善する

 筆者は、①と②の戦略から取りかかることを薦めます。というのは、③はハードルが高いからです。非職業政治家のトランプ候補を標的にした従来のメッセージではなく、職業政治家に対する認識を変え好感度を高めるメッセージの発信が、共和党候補にとって喫緊の課題です。

今後の展開

 トランプ候補がイスラム教徒入国禁止の声明を出した12月7日を挟んで行われた米CBSテレビとニューヨーク・タイムズ紙による共同世論調査(12月4日―同月8日実施)によれば、同候補の支持率は35%で首位を維持し、声明前と変化はありません。2位は16%の支持率を得たクルーズ上院議員で、3位は13%のカーソン候補です。トランプ候補の支持率は10月のそれと比較すると上昇しており、同候補を守る反職業政治家の風は、反シリア難民や反イスラム教徒を巻き込み、さらに風力を増していると言えます。アメリカ国内外からの同候補への批判は、支持者の団結力と熱意を高め、「我々(支持者)対彼ら(シリア難民・イスラム教徒)」という対立の構図を深めました。

 今後、トランプ陣営は、支持層が重なるクルーズ陣営とカーソン陣営の票を奪う選挙戦略を本格的に展開していくでしょう。それが、トランプ候補の共和党候補者指名獲得を現実にするからです。

  
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