2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2015年10月10日

 ドナルド・トランプ氏(69)が来年の米国大統領選挙、共和党候補の「台風の目」となって久しい。同氏が正式に立候補を表明したのは今年6月16日。当初はジェブ・ブッシュ、スコット・ウォーカー、マルコ・ルビオ、リック・ペリー氏ら有力候補が凌ぎを削る中、むしろ泡沫候補という扱いだった。

 ところが、候補者になるや否や、次々に問題発言を連発。「メキシコからの移民は犯罪者だらけ」「中南米政府は不要な市民を米国に『姥捨』している」「大統領になったらメキシコとの国境に万里の長城のような塀を作る」など、オバマ政権の「緩い」移民政策を非難する内容が目立った。

9月15日、ロサンゼルスのサンペドロ港に永久停泊された戦艦アイオワで演説するトランプ氏(Getty Images)

 これらの発言はメキシコ政府の正式な非難、メキシコの麻薬王による「賞金首」宣言などを引き出すと同時に、トランプ人気に火をつけた。7月9日の時点ですでに世論調査ではトランプ氏が数々の本命をかわしてトップに立ち、以来現時点まで支持率トップを維持している。

トランプ氏に共感する
「ネトウヨ」「ミドルクラス以下の白人」

 最初にトランプ氏に共感したのはいわゆる「ネトウヨ」だった。ソーシャルメディアなどネットでトランプ氏の発言が拡大し、面白半分ながら応援の声が高まった。それがメディアに取り上げられることで話題性がさらに高まる、という循環を繰り返した。

 人気の秘訣はズバリ「ミドルクラス以下の白人」の共感を集めたことだ。現在米国にはおよそ1200万人の不法移民が存在する。オバマ政権は彼らに正式なビザを与え、米経済の一環に取り込むのが基本方針だが、共和党支持の南部州では、

 「不法移民の子弟が州民と同価格で公立大学に進学する」

 「不法移民にも国民健康保険制度を適用する」

 などの政策への非難が高まり、訴訟沙汰になっているところも少なくない。

 「自分たちの仕事を奪う不法移民が米国民の税金の恩恵に預かるのはおかしい」という中低所得層にくすぶった怒りを、トランプ氏は舌鋒鋭く表現したことになる。

 また、トランプ氏は長年にわたり「アプレンティス」というテレビのリアリティー・ショウをプロデュースし、自らが主演してきた。内容は参加者がトランプ氏に与えられたビジネス課題をグループでこなし、敗者チームから1人が脱落、最後に残った1人がトランプ氏の企業で働ける、というもの。番組内でのトランプ氏の歯に衣着せぬ発言も人気で、ショウは予想外のヒットとなった。

 アプレンティスで見せた強力な個性を大統領候補としてもそのまま維持し、軸がぶれない点も評価されている。知名度に加えて「米国人の隠された本音」をズバズバ言う姿勢が、「チェンジ、ユニティ(統一)」を訴えながらむしろ8年の政権で米国内の格差や人種間の軋轢を高めたオバマ大統領とは違う、新しいリーダー像を生み出したとも言える。


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