2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月16日

 米ヘリテージ財団の南アジア専門家、リサ・カーティス上席研究員が、8月20日付同財団のウェブサイトにて、今般のスリランカ議会総選挙でシリセナ現大統領を支持する与党が勝利したことを歓迎するとともに、米国は地政学的に重要なスリランカの新政権に手を差し伸べるべきである、と述べています。

 すなわち、8月17日のスリランカ議会選挙の結果、ウィクラマシンハ率いる統一国民党(UNP)中心の連立政権が出来ることになる。これは、人権、特にタミル人への対応を改善するよう圧力を掛けて来た米国にとり、朗報である。

親中派だったマヒンダ・ラジャパクサ前大統領 (画像:Getty Images News)

 新政権は、ラジャパクサ前政権のような対中依存ではなく、米印との関係を強調する、よりバランスの取れた外交政策をとることも期待される。米国は、新政権に手を差し伸べ、政治、経済、安保関係を強化するイニシアチヴを提案すべきである。これは、海の要衝に位置する戦略的に重要なこの島国の安定と民主化促進に役立つであろう。

 ウィクラマシンハは、強固な連立政権を作れるだろう。シリセナの下で始まった良い変化が続く可能性が高い。シリセナは、改革と反汚職のプログラムにコミットし、大統領権限を抑制する憲法第19修正を通過させ、議会制民主主義を回復するとの約束を守った。同条項には、大統領任期を二期までとする制限の復活、議会解散権の制限、憲法評議会の復活が含まれる。

 シリセナ政権は、ラジャパクサと家族による汚職の摘発、ウェブサイトへの検閲の廃止、情報公開法の導入という措置もとった。民族的和解を促進するためにシリセナ政権は、内戦で荒廃した北部州で土地を軍から民間に返還し、国連の人権査察団の入国を歓迎した。

 ウィクラマシンハはシリセナ同様、ラジャパクサの親中政策からの離脱、インド、中国、日本、パキスタンとの等距離外交を続けると期待される。インドは中国の潜水艦のスリランカの港への寄港(昨年2回)を警戒している。シリセナは、コロンボ港への中国の14億ドルの投資を凍結し、契約条件を慎重に見直すことを約束している。

 それに対して、インドのモディ首相は3月にスリランカを訪問し、1987年以来のインド首相訪問となった。インドは、過去10年スリランカに、中国の50億ドルに対し17億ドルの融資をした。

 米・スリランカ関係も過去6か月、改善した。ウィクラマシンハがそれを深化させようとすることは疑いない。憲法第19修正が通った直後の5月初めに、ケリー国務長官はスリランカを訪問し、民主主義への復帰を称賛した。米国は、スリランカの歴史的な選挙結果を利用し、経済、政治、安保協力を進めるべく、新政権に手を差し伸べなければならない。具体的には以下のことをすべきである。


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