インドの国民会議派議員で国連事務次長も務めたことのあるShashi Tharoor が、モスクワで開催されたBRICSの初めての議員会合に参加し、BRICS諸国には国際秩序においてその実力にふさわしい地位が与えられるべきである、と論じています。
すなわち、BRICSは無視し得ない国際的なグループになっている。BRICSはゴールドマン・サックスが作った用語で、このグループが協力のための基礎になるのかという懐疑論は最初から付き纏ったが、プーチンが関心を持った。程なく年次首脳会議が行われることになった。プーチンはBRICSというもう一つ別の場を築くことを望んだのである。BRICSは新開発銀行を創設した。
BRICSは戦後に作られた国際システムの妥当性が問題にされつつある時に台頭した。そのシステムは先進国に利益となっただけでなく非植民地化と開発を進め、新興国の声を取り込む途を見出した。しかし、最早充分ではない。中印はその経済の重みに見合ったグローバルな影響力を求めている。ブラジルと南アフリカは大陸の強国として登場した。ロシアは西側のシステムの外縁でその地位に苛立っている。現在のシステムは改造されねばならない。
しかし、既存の主要国は影響力を手放そうとはしない。世銀とIMFにおける中国の投票権がベルギーと同じだというのは馬鹿げている。しかし、これら機関において先進国と台頭する諸国との衡平を図ろうというG-20の努力は止まったままである。米議会はIMFの投票権の改革を拒否している。
インドやブラジルのような諸国は、一世紀前のドイツや日本のように世界秩序を引っくり返すことを目論んではいない。一段と高いテーブルの席を欲しているだけである。これを禁じられれば、これら諸国は自分たちの秩序を築くしかない。もっとも、インド、ブラジル、南アフリカは中国主導の秩序が現在のものの改善になるかを訝る理由がある。
世界の秩序を唱導する者にとっての課題は、台頭する諸国を、規模、能力、国際システムへの貢献度に見合った公正な扱いを保証する枠組みに取り込むことである。現在の世界の指導者はステーツマンシップを欠いている。彼等が支配するシステムに頑強にしがみつき、新たな参入者に扉を閉ざし、外に置かれた者に選択の余地を与えない。
BRICS諸国に共通していることは当然与えられるべき地位から排除されていることである。それだけでは新しい国際システムの基礎として充分とは見えないかも知れないが、これら諸国の経済規模は2050年にはG-7を追い抜くとあれば、そうとばかりはいえないであろう。BRICSが既存のシステムの中で主導することを許されないのであれば、必然的に彼等自身のシステムを作ることになる、と言っています。