2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月3日

 5月26日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、米シンクタンクCNASのCEOであるフロノイ元米国防次官及びCNAS代表のフォンテインが連名で寄稿し、2008年金融危機以降、米国世論が極度に内向きになっているが、経済政策と対外コミットメントは相反するものではなく、両者は互いに支え合う関係にある、と述べています。

画像:iStock

 すなわち、種々世論調査を見ていると、何が米国にとって一番重要かについて、政党支持別の分裂があるようだ。5月初めのWSJ / NBC News共同調査によると、共和党支持者は「国家安全保障問題とテロ対策」が一番重要だとする一方、民主党支持者は「雇用創出と経済成長」が一番重要だと回答した。

 政府においても、右の二つの問題は別々の省庁が担当し、個別の対応が取られている。しかし真実は、両者は相関したものであり、両者とも国家の目標として追及すべきものである。今日シリア、ウクライナの問題、中国との摩擦等、世界は炎上しており、米国の関与はこれまでになく求められている。それなのに、オバマ政権の不介入政策、議会での手詰まり、そして2008年金融危機の後遺症によって、米国はこれまでになく内向きになっている。

 しかし経済力を回復させれば、「米国の没落」という議論も引っ込み、貿易、海上交通の安全、あるいはサイバーテロとの戦いにおける米国の指導力も高まろう。従って、党派の別を越えた、大胆な経済政策課題を設定し、それにより国家の安全保障も高めるようにしないといけない。

 この70年間にわたって米国は自由で開放的な経済システムを推進し、それは米国の繁栄と、その繁栄を保全するための防衛力の涵養を助けてきた。今はまた、国際経済の野心的課題を設定すべき時である、と述べています。

出 典:Michèle Flournoy & Richard Fontaine‘Economic Growth Is a National Security Issue’(Wall Street Journal, May 26, 2015)
http://www.wsj.com/articles/economic-growth-is-a-national-security-issue-1432683397

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 上記論説の筆者は、いずれも、超党派シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」(CNAS)の最高幹部です。ミシェル・フロノイは、元国防次官で、2007年カート・キャンベルとともに同センターを立ち上げた民主党系の人です。リチャード・フォンテインは、議会スタッフから叩き上げた南アジア専門家で、国務省ではアーミテージ副長官のチームで働き、その後マケイン上院議員のスタッフを数年務めた共和党系の人です。この二人で、ワシントンの外交政策コミュニティーの超党派的意見を代表しています。


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