2024年12月8日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月11日

 11月3日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙外交問題主任コメンテーターのギデオン・ラックマンが、BRICSは経済が停滞しているのみならず、5カ国にまとまりはなく、新しい世界秩序を創るのは難しいだろう、と述べています。

 すなわち、BRICSには3つの大きな問題が浮上している。第1は経済である。中国を除く4カ国の経済は不振で、中国も困難な改革に直面している。BRICS諸国に共通の特色は活力であったが、少なくとも当面それは失われている。

 第2の問題は政治で、BRICSが元気だった頃は政治もよく機能していると見られていたが、いくつかの国が困難な状況にある今、汚職と言った政治的弱点が目立っている。

 第3の問題は、グループがちぐはぐなことである。BRICSは非西側世界の声になろうとしているが、加盟国は異質である。

 共通点があるとしたら、負の面においてである。南アフリカとブラジルの今年の成長率はわずか1%前後である。両国とも、いたるところで犯罪の懸念がある。両国での政治の中心課題は汚職であり、他の3カ国も同様である。 

 外交面では、ロシアのクリミア併合に関する国連の非難に、BRICSの他の4カ国は賛同しなかった。ロシアのBRICS代表は、BRICSは米国の支配する世界に対する敵意を共有している、と述べた。

 確かにBRICSは西側による世界の支配は長すぎたと共通に感じているかもしれないが、BRICS諸国の世界観は決して一様ではない。ブラジルの半平和主義的多角主義と最近のロシアの怒れる民族主義とでは大きく違う。

 一方、中国は、他のBRICS諸国がどう考えようと自らの道を歩むであろう。

 多分BRICSの真の地政学的謎は、米国が西側同盟の核の役割を果たしているように、中国がBRICSの核になれるか、あるいはなる気があるか、であろう。


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