2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月16日

 ・スリランカ政府の過去の不正をただす司法面での措置を支援すること。スリランカの内戦中の人権侵害についての取り組みを支援すること。

 ・米軍による軍事訓練を再開し、安保協力を復活させること。

 ・ブッシュ政権が打ち出していた途上国援助計画、ミレニアムチャレンジコーポレーション(MCC)の契約に関する議論を再開すること。MCCを通じてスリランカに資金供与されれば、内戦で荒廃した北部と東部で、ビジネスの発展、経済活動の回復に役立つであろう。

 ・新首相を米国に招待すること。米国は、スリランカがとろうとしている新しい方向を支持し、民主主義の強化、安全保障上のパートナーとなりたいと明確にしなければならない。

出典:Lisa Curtis,‘Sri Lankan Poll Results Augur Well for Relations with the U.S.’(Heritage Foundation, August 20, 2015)
http://www.heritage.org/research/reports/2015/08/sri-lankan-poll-results-augur-well-for-relations-with-the-us

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 今回のスリランカの総選挙の最大の焦点は1月の大統領選で敗北したラジャパクサの復権があるか否かでしたが、ラジャパクサの復権はありませんでした。

 ラジャパクサは、強引なやり方でしたが、LTTE(タミル・イーラム解放のトラ)との内戦を終結させました。これは大きな成果です。それもあり、スリランカの経済も好調でした。それで自信満々で任期を短縮して大統領選をやりましたが、敗れました。そして今回復権を狙いましたがうまくいきませんでした。

 ラジャパクサの権威主義的やり方、親族重用(弟を実質的な国防大臣にするなど)、汚職などが、民主主義的価値観が比較的浸透しているスリランカ人には受け入れられなかったということでしょう。

 ラジャパクサは外交面では親中国に傾き過ぎでした。シリセナ大統領、ウィクラマシンハ政府がそれを是正する方向の政策展開をすることは確実でしょう。

 この論説は、今回の選挙が米国にとり、大きなチャンスになると強調、機会を逸せずスリランカとの関係改善、深化を進めるべしと論じていますが、その通りでしょう。日本に関しても同じことが言えます。シリセナ大統領、新政権を支援し、民主主義国に親近感を持つスリランカになるように努力すべきでしょう。

 中国の「真珠の首飾り」構想(インドを取り囲むように中国海軍が寄港しうる港を作ること)もスリランカなしではうまくいきません。スリランカとの関係強化は対中戦略の一環にもなり得るのです。

  
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