男性の育休制度充実で企業側にメリットも
しかし現在シリコンバレーを中心に、男性にも女性と全く同期間の育休を認める企業が増えつつある。シリコンバレーのハイテク企業は常に若く教育レベルの高い人材を求めており、慢性的な人手不足に悩まされている。産休、育休制度の充実は、若い世代が子供を持ちやすい環境を作る、女性の職場復帰へのハードルが低まる、男女の賃金差が縮まる、など様々なメリットが指摘され、求人にプラスに働くと言われる。
以下は「優れた産休、育休制度がある」とされるシリコンバレー企業のリストだ。
・アドビ社 26週間の産休、16週間の育休
・アマゾン社 母親には最大で20週間の産休と育休、父親には6週間の育休
・アップル社 母親には最大で18週間の産休と育休、父親には6週間の育休。ユニークな福利厚生として凍結受精卵の費用を会社が負担
・フェイスブック社 両親に対し16週間の育休、子供誕生時に4000ドルのボーナス、アップルと同様の凍結受精卵費用負担。社内に授乳室の設置
・グーグル、ユーチューブ社 母親に最大18週間の産休、育休。父親に最大12週間の育休。子供誕生時に500ドルのボーナス。もし社員が子供が成人する前に死亡した場合、子供が18歳になるまで毎月1000ドルが支給される
・マイクロソフト社 母親に最大20週間、父親に最大12週間の産休、育休制度
・ネットフリックス社 子供が誕生後1年間は両親ともに無制限の育休制度
・ツイッター社 母親には20週間、父親には10週間の育休制度
つまりシリコンバレーのIT企業の有名所はほぼすべて理想的な産休育休制度を母親だけではなく父親にも提供していることになる。こうしたサービスを提供できない企業は時代遅れとされ、求める人材を雇用することができない、という時代がアメリカでは現実のものとなりつつある。
とはいえ、シリコンバレーの高給を約束された企業がこうした福利厚生も充実させることで、いわゆる格差社会に拍車をかける結果になる、との予測もある。入社するのが難しいシリコンバレー企業に勤める人はより充実した家族生活が保障され、それが叶わぬ層は有給の産休、育休すら取得が難しい。
それでも今回のザッカーバーグ氏の育休宣言は、大企業のトップ自らが育休制度を積極的に活用することで、男性の育休申請が容易になり、米企業全体に影響を及ぼすことが期待されている。もちろんザッカーバーグ家ともなれば子供のために一流のベビーシッターを用意することも可能だが、「家族一緒に過ごして娘の成長を見守りたい」と堂々と宣言したザッカーバーグ氏は、アメリカの新しい世代の経営者像の雛形となりそうだ。
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