2024年11月25日(月)

WEDGE REPORT

2016年1月9日

 この完璧なラインナップで次世代IoTの覇者を目指すサムスンだが、今回のCESで最も注目されたのが「スマート冷蔵庫」の発表だ。この冷蔵庫は「家庭内コミュニケーションのハブ」となることを目指して開発された。ドアに21インチモニターが設置され、このモニターを通して家族がコミュニケーションを取り、情報を共有しあい、スマートホームのコマンドセンターにもなる。

 洪氏は冷蔵庫を選んだ理由について「キッチンはもっとも家族が集まる場所であり、キッチンの中で24時間稼働し、もっとも使われる家電が冷蔵庫」と説明。家族の出勤、通学時間などがすれ違っても冷蔵庫のモニターは「行ってらっしゃい」というようなメッセージを伝える伝言板になる。働く母親にとっては、子供の帰宅時間をチェックでき、モニターを通して会話もできる。

 さらに、この冷蔵庫は庫内にカメラが設置されており、在庫の様子を外部からモニターすることができる。車の中からチェックして買い物に利用したり、モニターに「在庫のものでできる夕食レシピ」を表示させることも可能だ。

 これまでテレビをこうしたコミュニケーションハブに、という考えは他のメーカーにも見られた。しかし冷蔵庫、という目の付け所はCESでも非常に注目されている。このように世界に「イノベーティブな企業である」という印象を与えることは非常に意義がある。

サムスンペイの威力とは

 もうひとつ、サムスンが他の家電業界を一歩リードしているのが、サムスンペイの存在だ。これは日本では数年前から存在する「お財布ケータイ」に他ならないが、携帯にクレジットカードを読み込み、その情報で支払いを行う、というものだ。

 米国ではお財布ケータイの普及は非常に遅れている。グーグルが「グーグル・ウォレット」を発表して話題になったが、実際はウォレットカードを作る必要があり、このウォレットに銀行口座から課金して使う、チャージカードのようなもの。携帯そのもので支払いができるシステムではない。

 サムスンペイはすでに米国内ではアメックス、ビザ、マスターなどと提携。さらにシティ銀行、チェース銀行などの大手もサムスンペイの受け入れを発表している。米国の他、カナダ、オーストラリア、シンガポール、中国でもサムスンペイは広がりつつある。

 日本の家電は機能だけを見ればサムスン、LGなどの韓国製品よりも優れている。携帯電話もそうだろう。しかし野菜室、チルド室、と細かく別れた「日本仕様」の冷蔵庫は米国などの外国では販売すらされていない。携帯も、世界のどこよりも早くお財布ケータイを実現していたのに、それを世界に紹介することなく、自国内のみの需要に対応。「ガラパゴス」状態が携帯だけではなく、家電やその機能一般に及んでいる。

 日本企業が韓国企業のような勢いを取り戻し、世界のトップであり続けるためには何が必要なのか。サムスンの基調演説から学ぶべき点は多い。

  
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