ディーゼル排気の不正問題で渦中にあるフォルクスワーゲン(VW)がCESで基調演説を行い、その中で近未来と中長期にわたるVWの車の方向性を示す2つのコンセプトモデルを発表した。
ニューVWの中身とは?
演説を行ったのはVW乗用車部門CEOであるハーバート・ディエス氏。同氏は不正問題から「ニューVW」に生まれ変わる、と宣言、自動車を究極のモービルデバイスと位置づけ、改善されたバッテリーにより、車をクラウドと捉える、という考えを披露した。
その究極のモービルデバイスとして、近い将来実現可能なコンセプトが「e-Golf Touch」と呼ばれる車だ。
まず、EVであるためゼロ・エミッションで環境に優しい。このモデルは計器パネルを含めすべてデジタルデバイス化されている。センター部分には9.2インチモニターが設置され、ボタン類を一切排除、タッチパネル式のスクリーンはハンドジェスチャー、ボイスコマンドに対応する。
さらにこの車はダッシュボード部分にワイヤレスの携帯電話チャージャーが組み込まれており、携帯を置くだけで充電が可能となっている。今年中にはワイヤレスでのスマホとスクリーンコネクトも実現する予定だという。
e-Golf Touchが今年中にも実現する近い将来のVWのモデルである一方で、ディエス氏が「ネクスト・ビッグ・ステップ」と呼ぶのがBUDD-e(バディ)コンセプトだ。この車は1960年代に世界中で人気となったVWのフラッグシップ、「ミニバス」を未来によみがえらせるもの。ずばり、仲間と一緒、というのがアイデアの中心となっている。
バディは「長距離走行可能なEV」である。それを実現するために、電池をシャシー下部に平たく敷き詰めるデザインとなっている。四輪駆動でパワーも十分だ。
仲間と一緒、を体現するのは後部座席横に設置された巨大スクリーン。このスクリーンでは複数のデバイスをコネクトできる。それぞれが持ち寄った音楽、写真、ビデオ、ナビ、旅の計画などを一度に設定し、ドライブの間楽しむことができるという。
さらにこの車は「自分で考え、ドライバーの嗜好などを学び、理解する」AIのような特徴を持つ。一度入れられたコマンドを記憶し、次に車に乗るときに自動的にドライバーの好みに合わせて設定することが可能となる。
また、この車にはドアハンドルがない。ドアもボイスコマンドで開閉でき、運転席から「助手席のロック解除、開放」とコマンドすれば自動的にドアが開く。コックピットももちろんパネルのみだ。