今回の核実験直後、韓国は「戦略的アセット」の韓国配備に関する協議を米国との間で行っていることを明らかにした。これが以前から検討されていたTHAAD(終末高高度領域防空)システムを指す場合、北朝鮮の核実験が(ロシアにとっては望ましくない)アジア太平地域での米MD網増強を招いていることになる。
要するに、北朝鮮の核・ミサイル開発はロシアにとって迷惑千万なのである。しかも今回、北朝鮮は初めて中国にもロシアにも事前通告を行わずに核実験に踏み切ったとされ、ロシアにとってはますます北朝鮮がアンコントローラブルな不安定要因になりつつあると言える。
露朝関係の今後は
近年、中朝関係の悪化で空いた穴を埋めるように、ロシアは北朝鮮へのエネルギー支援や投資などを行ってきた。ロシア主導で朝鮮半島縦断パイプラインを建設する等、ロシアらしい壮大な構想も持ち上がった。ソ連崩壊後に失われた朝鮮半島での影響力を回復するという政治的理由ともに、アジア太平洋地域への経済的進出の足掛かりや極東振興のきっかけとしたいとの経済的思惑がこれらの背景にはあったと思われる。
しかし、北朝鮮は昨年5月にモスクワで開かれた対独戦勝記念式典への金第一書記の招待を直前でキャンセルするなど、露朝間には微妙な隙間風が見られる。今後、ロシアが北朝鮮への制裁を強化することで露朝関係が緊迫化へ向かうのか、今後とも経済面での関係強化は続いていくのかなどが今年の注目点となろう。
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