家電口論

2016年1月27日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

20年飽きない製品

iStock

 20年使える製品と、20年使う製品とは意味がかなり違います。飽きなかった、嫌いにならなかったということです。20年という時間は決して短くないです。赤ん坊が、成人する期間ですから。

 商品企画をする時、どんな製品が難しいかというと「飽きない」製品です。

 これに対し、特長ある製品というのは比較的作りやすい。が、この特長の扱いが厄介で、魅力である一方、飽きられたり、嫌われたりするのも、この特長だからです。

 だから、20年耐久性があるデザインというのは非常に大変です。このためミーレの、デザイン(ここでは企画、設計を含む)チームは、とても大変です。
2015年秋に、お話を聞いたときには、31人の意見が一つにまとまるまで議論すると言います。31人ですから、当然おいそれとはまとまってくれません。数年掛かるそうです。

 出てくるデザインは、キッチンだけでなく、リビング他、キッチンを内包する部屋、隣接する部屋とのハーモニーを考え抜くそうです。文字で書くのは簡単ですが、それを成し遂げるとなると本当に大変です。

高級家電とは

 人はミーレに対し高級家電メーカーと言う言葉を使うことが多いです。

 しかしミーレの製品を紐解くと、品質第一、性能第一であることが分かります。それは、彼らにとって自分たちの製品が作り出す世界を信じて、曲げないと言うことです。そして、その製品を世の中が必要としている時に出す、ということです。

 「メーカーは最終的に製品でしか語ることを許されない」というのが、私の信条ですが、ミーレの製品群は、雄弁にいろいろなことを語りかけてくれます。そして日本のメーカーが見失ったことを、未だに持ち続けていると思います。

 最後に、ミーレのキッチンの今について書いておきます。

 キッチン自体はミーレは現在扱っていません。2005年に譲渡したそうです。理由は、システムキッチンが世界のどこにも充分浸透し、ビルトイン家電の販売だけで、いろいろな部屋とのハーモニーが可能になったからだそうです。

ミーレの製品に課題はないのか?

 では、ミーレの製品に課題はないのかというと、そうではありません。

 「千里の馬も伯楽に逢わず」という昔の故事があります。

 伯楽とは、古代中国、春秋戦国時代にいたとされる馬の名鑑定師。彼が振り返るだけで、馬の値が10倍になったというのですから、凄まじいモノです。このため「伯楽」という言葉は、よくプロ野球のスカウトなどに使われています。

 私は、先ほど「ミーレの製品群は、雄弁にいろいろなことを語りかけてくれます」と書きましたが、これが分からない人も多い。少なくとも、全ての人が家電の伯楽であるわけではありません。

 このため出てくるのが「価格」。価値をお金に換算したモノです。

 ミーレ製品は、それなりの価格がします。20年保てるわけですので、基本2倍。しかも、それは他社のビルトイン製品に比べてです。

 ビルトインは、枠にはめるため、大きさが必要です。言い方を変えると、原料を多く使って、大きく作るというわけです。

 また、価値は、「価値観」という言葉がある様に、人により大きく違います。ミーレのプライス・リストを見せると「高いなぁ」と思う人が大半だと思いますし、モノが分かっている人でも右から左へ出せる価格ではないと思います。その上、他の家電メーカーと比べると、機能はよく使うモノに絞ってあります。となると、使いやすくはあるが、多機能とも言えません。

 要するに、スイスの高級時計が落ち込んだ「売れない」という可能性は常に付いて廻るのです。元値が高いですから、買えないとなると、本当に売れなくなります。高級品と言われた製品を作るメーカーは、この洗礼を受けています。

 私が見る限り、ミーレは『会社』として、ここに対応していると思います。それが「会社としてのミーレ」、次回のお題でもあります。

  
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