WEDGE REPORT

2016年1月22日

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 戦況がこのように政権軍に大きく優位に傾いている中でシリア和平協議が始まろうとしているわけだが、このままでは「失敗が確定したのも同然」(ベイルート筋)という見方が強まっている。第1に、協議直前になっても、反体制派の出席メンバーをめぐって、米国とロシア・シリアの調整が全くついていない。

 12月に採択された国連安保理決議は、シリアの内戦当事者が1月から直接協議を開始、半年以内に移行政権を樹立し、1年半後に自由選挙実施・新政権発足というシナリオだ。しかし反体制派やサウジアラビアが移行政権にはアサド氏が入らないとしているのに対し、シリア政府、ロシア、イランは同氏の役割を排除していない。

 アサド氏やロシアは今や、「内戦に勝利しつつあるのに、なぜ退陣する必要があるのか」と主張し始めており、協議が始まってもアサド氏の退陣を巡って両派が罵り合いをするのは目に見えている。アサド氏を強気にしているもう1つの理由は、米国が来年3月まで同氏の政権保持を容認していると伝えられていることだ。

モスルに紙幣舞う

 こうした中で、有志国連合とロシアによるIS攻撃は続いているが、ISの劣勢がさらに明らかになりつつある。中でも米国によるISの石油密輸タンカーへの攻撃が資金源を断つ上で有効になっており、米国防総省がこのほど映像を公表したところによると、米軍機が11日、ISに占領されているイラク北部モスルのISの倉庫を空爆し、貯蔵されていた現金の紙幣が宙に舞った。

 この紙幣が米ドルなのか、イラク・ディナールなのかは明らかではないが、米CNNによると、数百万ドル相当の現金だったのは間違いないという。中東を統括する米中央軍司令官のオースティン司令官は「素晴らしい攻撃だった」と自賛し、米軍が今後も資金源を断つ攻撃を継続する方針を強調した。

 ISが軍事的にも、資金的にも追い詰められる中、開催されるシリア和平協議。不調となれば、それだけIS壊滅は遅れる。ケリー米国務長官とラブロフ・ロシア外相は協議に参加する代表団をめぐり、20日に話し合いを持ったが、対立は解消されなかった。和平協議が開催されるかどうかも含め、ここ数日がシリアの将来にとって大きな岐路になる。

  
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