香取さんにいざなわれて、指定された席に荷物を置くと、「どうぞ」と会員名簿が渡された。
ていねいに作られた冊子には、会員の名前と顔写真、職業、そして本人による簡単な仕事説明文が記されている。名簿によると、会員は70人弱程度。個人事業主が中心で、専門職や営業系の会社員もいるようである。
名刺交換で活気づく
「誰を紹介しましょうか」
と香取さんに尋ねられたので、名簿で目についた人の名を口にすると、香取さんは立ち上がって、メンバーを紹介してくれた。
会員なので、当然、顔見知り。
そのためなのか、名刺交換の間中、こうした会にありがちな“気づまりな”瞬間は一時もなく、「受け入れられている」と感じられた。一人と名刺を交換し終わると、すぐにまた、「いいですか」と四方から声がかかる。
そんなやりとりがあちこちでおこなわれていて、名刺交換は延々と終わりそうにもなかったが、7時ちょうどに会はスタート。進行役の開会宣言で、参加者たちは席に戻り、厳粛な面持ちでプロジェクターを見つめた。
まずは自分から“与える”
画面には、会の規則が映し出されて、進行役が声に出して読み上げる。
それによると、この会の基本精神は、「与えるものこそ、与えられる」。つまり、自分のメリットを考える前に、人のために動こうということらしかった。
参加する前に香取さんから聞かされてはいたけれど、この会はお互いがお互いのビジネスを盛り立てるものなのだ。具体的には、メンバーに仕事を紹介し、メンバーの利益になるよう、日頃から心を砕いて生活する。
その“成果”は、早速、進行役の報告で発表された。
進行役の彼は、会則を読み終わると一拍も置かずに流れるように、「前回からの1週間のうちで、誰が、誰のために、何件、いくらの仕事を発注したか」について、数字をあげて朗々と報告した。
そして“貢献度”が髙かった上位5人については、画面に順位とポイントを出しながら、カウントダウン方式で紹介した。
予想以上の結束ぶり
会場からは拍手が湧き上がり、呼ばれた人が立ち上がると、更に大きな拍手や声援が飛んだ。
予想以上の“ビジネス”ぶりに、私は場違いな思いを抱いた。営業職というものを経験したことがないので知らないのだが、営業系の会社ならもしかしてこんなことをするのかもとも思った。
とはいえ、場違いに感じられたのは、会員同士が思った以上に親密だったせいかもしれなかった。毎週顔を合わせているからか、会員たちはとても親しげで、誰かが立ち上がるごとに、声援の応酬をするなど笑顔が多かったのだ。