「お互いにビジネスの世界で成功しよう、そのために最大のパートナーになろうという繋がりはとても深い関係になりますよ」
と教えてくれたのは、ビジネス系の異業種交流会に参加する香取豊さん(38歳・仮名)である。
彼は、「ひとつの専門職から一人しか参加できない」という交流会に所属している。
未婚で、都内に一人暮らし。
専門職として勤務する彼は、平日は夕食しかとらないほど忙しく、土日もたいてい、仕事をする。
しかし、どんなに忙しくても、毎週開かれる定例“朝会”には欠かさず出席するという。
“会”で、どのような関係を彼は築き上げているのだろうか――?
ビジネス会は“絆”になりうる?
気になったのには、わけがある。
ここ数年、ビジネス系の異業種交流会や勉強会が増えたように感じているのが一つ。……私に来る誘いの数で言えば、SNSが発達し始めた10年位前から徐々に増え始めて、一時は減ったように感じていたのが、ここ2~3年は多めの数で安定しているように思える。
そしてその増加は、非正規雇用の増加ともリンクしているように感じている。
組織に所属しない“寄る辺のなさ”を解消する“なにか”がこうした会にあるのだろうか。
いや、一般にイメージするビジネス系の交流会ならば、広い会場でおおぜいが名刺交換するだけで終わりがちで、ビジネスチャンスが生まれたり、誰かと知り合うことはあっても、参加することが“繋がり”になるとは少し考えづらいと思う。
しかし香取さんの会は会員制で、毎週開かれる定例朝会への出席がマストなのだという。
果たして、そこではどんな“繋がり”が生まれているのだろうか?
誘われるまま、定例会に参加させてもらうことにした。
6月の事である。
ビジネス朝会は7時スタート
午前6時過ぎ。
ホテルで開かれるその“会”に参加するために、私は電車を乗り継いでいた。
スタートは7時からというのだが、「その前に受付や名刺交換をするので6時45分には着いていてくださいね」と香取さんから言われていた。
6時台の空気は冷ややかで、最寄り駅に降り立っても、辺りは、「1日がスタートする前」の静寂な雰囲気に包まれていた。
会場は、老舗ホテルの宴会場。
広々としたロビーに着いても、人気はまばらで、本当にここで大丈夫なのかと私は不安に思った。しかし会場前に着いた途端に、雰囲気は一変した。
受付には既にスーツ姿の男女が複数の列を作っていて、覗き見えた会場からは、熱いざわめきが外まで漏れ出ていたのである。
メンバーは個人事業主が中心
予想以上の活況ぶりに私が少し面食らっていると、香取さんが私を見つけて、中に案内してくれた。
披露宴がおこなわれるかのような豪華で広い会場には、全面に丸テーブルが並べられていて、正面には大きなプロジェクターが、右手には進行者用の長テーブル、左手には立ちマイクが、一つずつ置かれていた。
参加者は、50人以上もいただろうか。
パッと見た印象では、30~40代のビジネスマンが中心で、20代や50代の人の姿もちらほら。8割方が男性で、女性はスーツよりも華やかなワンピースや気取らないカーディガンの人が目立っていた。