定年バックパッカー海外放浪記

2016年3月20日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

突然不思議な美少女が出現

川面に夕陽がきらめき、山並みは夕暮れに包まれて

 後ろのテーブルの四人組の喧騒をよそに、ロビーでお茶を飲みながらぼんやりしていたらチェックイン手続きを済ませた少女がこちらに近づいてくるのが突然目に映った。なんとも形容しがたい不思議な雰囲気の美少女である。私の自動国籍識別装置が瞬時に作動して「こんにちは!お疲れさま」と日本語で彼女に向かって声をかけている。清潔で透明感のある眼差し、小ざっぱりとした服装、セミロングのストレートヘヤーという外見から“大和なでしこ”と識別したのだ。彼女は一瞬困惑したような恥ずかしそうな表情を見せた。咄嗟に外国語音声装置が作動、「アニョハセヨー。オディエソワッソヨ?」(こんにちは。どちからかいらっしゃいましたか)とハングル(韓国語)で挨拶すると嬉しそうに笑みを浮かべて「韓国の方ですか。私は釜山からきました」とハングルで丁寧に答える。私がハングルで「いえ日本人です。私は今日フエから来ました」と応じると「ウリマルチョンマルチャラシネヨ」(ハングル本当におじょうずですね)と言って私の目をまっすぐに見た。

 私のテーブルの向かい側の椅子を勧めると彼女は腰かけて私が次に何を言うのか聞き逃すまいとじっと私を見つめている。妙齢の美人に見つめられるとオジサンはどぎまぎするものだが、真剣な表情にこちらも緊張してしまう。韓国語で「いま、ハングルを勉強中ですが、まだまだです。英語でお話してもよろしいですか」と暗記しているハングル・テキストの例文どおりに発音すると彼女はゆっくりと頷いた。「今晩私は伝統舞踊と民族音楽のショーを見てから夕食に行く予定です。あなたも一緒に行きませんか」とゆっくりと英語で誘うと「Yes,thank you very much.」と嬉しそうに即答。

 彼女、ユニーは釜山出身の大学4年生。彼女は「高校・大学で英語の授業を受けたのですが、実際に外国人と英語で話すのは今度の旅が初めてなのでゆっくり話して下さい」と礼儀正しい。午後6時にロビーで待ち合わせて出かけることを約束。彼女は2階にある部屋に荷物を持って上がっていった。

台湾ギャル、ウェンディーは小悪魔に豹変

 時計を見るとまだ3時半だ。後ろのテーブルでは例のポーカー賭博で盛り上がって台湾ギャル、ウェンディーの嬌声が一段とかまびすしくなる。私は大部屋に引き上げ休息してからシャワーを浴びて髭を剃り着替えてさっぱりした。正直なところユニーとのデートへの期待感で気持ちが天まで舞い上がっており、何をしても夢か現か判然としない。準備万端整え時計を見ると5時45分である。はやる気持ちを抑えて10分じっと我慢。約束の6時よりも早く5時55分にロビーに出て行った。

 ホステルのレセプションのボーイが私の顔を見るなり狼狽して大声で叫んだ。「早くしてください。韓国の女性があなたは先に出かけたと聞いて、慌ててあなたを追いかけて出てゆきました」ボーイに詳しく話を聞くとウェンディーがユニーに「日本人のタカならさっき外出したわよ」と余計なことを言ったという。ユニーはボーイに伝統舞踊&民族音楽ショーを上演している劇場の場所を聞いて小走りで出て行ったという。

 ウェンディーに「俺はここにいるじゃないか。今まで部屋にいて今ロビーに出てきたばかりだ」と詰め寄ったが、彼女は「タカ、あなたがさっきホステルから出てゆくのを見たわ」と言い張る。相当にビールで酔っ払っているようだ。美少女のユニーに嫉妬して悪戯したことは明白であるが問い詰めている時間はない。

 私もユニーを追って黄昏の街に飛び出した。

⇒第6回に続く

  
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