2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2016年2月3日

ブラジルへ渡航制限設けぬ理由は政治的配慮か

 ブラジルでは、2月5日からリオのカーニバルが、そして8月5日からはオリンピックが開催される。報道によれば、WHOが「渡航制限を設けない」としたのは今年、国際的大イベントの続くブラジルに対する政治的配慮と考える専門家もいるようだが、そのような配慮で勧告を行わないのはあまりにもナンセンスだ。

 リオのカーニバルやオリンピックのように世界中から大勢の人が集まるイベントでは、世界中から感染症が運ばれてくる。そして、人が集まり、高い人口密度の中で効率よく広がった感染症は、再び世界へと散っていく。そもそも、今回のブラジルでの流行は2014年に開催されたワールドカップによってもたらされたとの説もある。ジカウイルスの流行状況がいまこのタイミングで緊急事態を宣言するに値するとWHOが判断した真の理由は、このふたつのイベントの開催予定にあったに違いない。

 ジカウイルスはデングウイルスと同じフラビウイルス類である。また、同じ種類の蚊が媒介することもあり、多くの専門家は、ジカ熱はデング熱と同じ流行パターンをとると考えている。

 日本では2014年までデングの国内発症例が70年も無く、2015年は再び1例も報告されていない。このことからも分かるように、輸入感染例がでたからといって、蚊で媒介される病気が簡単に国内で流行することはない。日本でジカ熱が流行することは考えにくく、まさに「対岸の火事」と言っていい。

 代々木公園からデング熱が広がったことを挙げ、日本でも感染者を刺した蚊が別の人を刺して感染が広がる危険性があるとする専門家もいるが、デングウイルスもジカウイルスも流行地で蚊を通じて感染する機会の方が圧倒的に多い。一般的な日本人が知っておくべきことは、「妊婦は流行地に行かない」というたったひとつのルールだけ。加えて言えば、「ジカ熱に限らず蚊は色んな病気を運ぶので、蚊の季節には虫除け対策を」ということになるだろう。

  
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