2013年4月に定期接種となり同年6月には事実上の定期接種停止状態となっていた子宮頸がんワクチンの副反応問題。名古屋市は、市内に住む若い女性約7万人を対象にワクチンの接種群と非接種群におけるワクチンの副反応が疑われる症状の発症状況についての調査を行い、12月14日に結果(速報)を発表した。回答率は43.4%、回答者のうち接種者の割合は69.47%。
年齢で補正した調査結果は、月経不順、関節や体の痛み、光過敏、簡単な計算ができない、簡単な漢字が書けない、身体が自分の意志に反して動くなど、メディアでも繰り返し報道されてきた子宮頸がんワクチンとの因果関係を疑うとされる24の症状について、「接種群に多く発生しているわけではなく、むしろ15症状で少ない」というものだった。
9月の朝日新聞の報道によると市内の接種者は約4万2000人。これを基に計算すると接種者のアンケート回答率は約5割で、非接種者の回答率約3割より高い。健康やワクチンの副反応に関心が高い人の方が回答する意欲があることを考慮すると、この調査はワクチン接種群に発症率が高く出るバイアスがかかっていた可能性が高い。それにもかかわらずこのような結果が得られたことは、薬害説をより強く否定するはずなのに、東京新聞は「健康に関心が高い人ほどアンケートに回答するなど、データ自体に偏りがある可能性は否定できず、信頼性については議論を呼びそうだ」と書いて真逆の印象を与えようとしている。
名古屋市のウェブサイトにある「名古屋市子宮頸がん予防接種調査 解析結果」(リンク)の表3を見てほしい。赤はワクチン接種者に有意に症状が多い項目、緑はワクチン接種者に有意に症状が少ない項目だ。まずは緑の「関節やからだが痛む」「集中できない」「めまいがする」など、ワクチンを受けた人に典型的だと思われていた症状が、ワクチンを打っていない人の方でより多く発生していたことにまず驚く。一方で、赤の「月経の異常」「物覚えが悪くなった」「身体が自分の意志に反して動く」「手や足に力が入らない」などの5項目を見れば「やはりワクチンを接種した子の方が発症率が高いではないか」と思う人もいるだろう。
名古屋市は、ワクチン接種群において5項目の発症率が有意に高かった理由を調べるため、ワクチンの種類別、病院受診の有無等、様々なクロス集計を⾏い、結果に影響している要素を検証したという。すると、年齢と症状にのみ強い関連が⾒られた。その詳細が表4「予防接種を受けていない人の生まれた年度と有病率」である。「視力が急に低下した」以外の赤の項目を含む全項目は、ワクチン接種との関連性を示すオッズ比よりも、発症年齢との関連性を示すオッズ比の方がはるかに高い。オッズ比とは「接種した人たちの発症率」÷「接種していない人たちの発症率」のことである。