2017年はテスラにとって大事な年になる。GMが今年1月に発表した新型「ボルト」は、販売価格3万7000ドル前後、政府や州のインセンティブ後の実質価格3万ドル、という低価格EVだ。もともとテスラに対し批判的なGMは、おそらくボルトを「テスラキラー」と位置付けているはずだ。テスラにとっては少なくとも同じ年に、同じ価格帯で「内容がボルトを上回る」モデル3で対抗する必要がある。
GMは本気でテスラを米自動車業界から締め出そうとしている、と思われる動きが今年1月、インディアナ州で見られた。同州の議員が「ディーラーによる販売以外の自動車販売を認めない」法案を議会に提出したのだが、この法案の裏側にGMの存在があったのは明白だ。
テスラに不快感を持っていたGM
GMは以前から直接販売にこだわるテスラに不快感を表明していた。ディーラー販売は米自動車業界の伝統であり、ディーラー業界と自動車業界は持ちつ持たれつの関係にある。しかしテスラのように直接販売が可能であれば、ディーラーにかけるコストは削減できる。その点をGMは「不公正」と糾弾してきた。
法案は2月25日から公聴会に入り、夏には結論が出る。それまではテスラは従来通りの直接販売ができるが、インディアナの決定がテスラに否定的で、それが他州にも広がればテスラの販売は非常に苦しい立場に立たされる。
また、GMはテスラキラーのボルト生産にあたり、韓国LGとのバッテリー供給の提携に踏み切った。テスラは当初「他のメーカーのEVにもバッテリーを供給する」ことをギガファクトリーのビジネスモデルに据えていたが、巨大メーカーが独自のバッテリー供給源を見出せば、マーケットそのものが縮小することになる。
17年、ギガファクトリーはオープンし、テスラはモデル3を生産供給できるのか、またボルトに対抗できる価格を提示できるのか。GMによるテスラ包囲網はさらに進行しているのか。来年は関ヶ原になるかもしれない。
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