2024年12月11日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月10日

 一方、支持者たちは、反対論者は過去に囚われている、イランとは核合意が成立したが、複数のならず者国家が核を獲得する可能性がある今、同盟国に提供する抑止力に信頼性を持たせるには、小型で標的識別能力のある核爆弾が必要だと主張する。それにロシアも米国の通常戦力の優位を相殺すべく低威力の核兵器に力を入れている。要するに、国防総省の懸念は、使えるミサイルが全て大型で強力だと、米国は敵からの限定核攻撃への対応を「自己規制」してしまうのではないかということだ。

 反対論を抑えて新型ミサイル・核は開発されるだろうと思える理由は他にもある。専門家は、核戦力の更新を約束していなければ、オバマ大統領は2010年に上院を説得して新START条約を批准させることはできなかっただろう、と指摘する。また、ロシアが同様の戦力を持てる状況にあって、LRSOも小型の通常弾頭ミサイルも搭載可能な次期爆撃機の開発を米国大統領が見送るとは思えない。

 コストも大きな問題にはならないだろう。専門家は、歳出強制削減は今やほぼ放棄され、さらに、2027年の支出ピーク時でも核近代化計画は国防予算の5%を占めるだけだと言う。

出 典:Economist ‘Cruise control’(January 23-29, 2016)
http://www.economist.com/news/united-states/21688862-barack-obamas-administration-which-began-vision-get-rid-nuclear-weapons-has

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限定戦争エスカレートさせる懸念

 オバマ政権による核戦力更新計画の中で、空中発射型巡航ミサイルの後継の空中発射長距離スタンドオフ・ミサイル(LRSO)の開発が論議を呼んでいます。

 米国の洋上発射型巡航ミサイルからはすでに核弾頭がすべて取り除かれていますが、空中発射型にはいまだ核・非核の双方が配備されています。したがって相手は攻撃されても、それが通常弾頭なのか、核弾頭なのか分からないので、状況を不安定化させる恐れがあり、危険であるというのが反対論です。

 これは、冷戦期の核戦略理論の中での柔軟反応戦略、限定核戦争に通じるもので、エスカレーション・コントロールが難しく、限定戦争がエスカレートする危険が大きいとするものです。


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