2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月10日

 LRSOの他に、B61-12という新型核爆弾の開発も含まれています。B61-12は、核能力を広島型の3倍からわずか2%と、拡大縮小することが可能で、命中精度も30メートル以内と、極めて高性能であると言われます。このように核能力を極めて低くできると、核の敷居が低くなり、核が使われやすくなる懸念があります。

 支持論は、ならず者国家が核を獲得するかもしれず、ロシアが米国の通常戦力の優位に対抗するため小型核爆弾の開発に力を入れているので、限定核攻撃の可能性に備える必要があると言います。特に同盟国の拡大抑止に信頼を持たせるために、小型の核爆弾が必要であると考えます。

限定核攻撃の可能性高まる中、米国はどうすべきか

 つまり論点は、限定核戦争の危険を排除すべきか、相手による限定核攻撃に備える必要があるか、です。確かにLRSOやB61-12の開発は、限定核戦争の危険をはらみますが、米国が自制しても相手が限定核戦争を仕掛けてくることには、備えなければなりません。

 ペリーらは、LRSOが無くても米国の核抑止力は損なわれないと言っていますが、限定的核攻撃に対する抑止力まで含めて言っているのかは疑問です。

 ペリーらはまた今後開発される次世代ステルス爆撃機LRS-Bで、敵の防空網を掻い潜って攻撃することが可能なはずであるから、これまでのような空中発射型巡航ミサイルは要らないと言っていますが、各国でステルス機を探知する「カウンター・ステルス」能力を追求しているなど、未開発のLRS-Bに過度に依存するリスクは高いです。

 現在の世界では、イランの核合意は成立したとはいえ、核拡散への動きが広まり、限定的核攻撃の可能性が無視できなくなっています。したがって米国が核を含めたエスカレーション・コントロールの柔軟性を追求し続けるのが賢明です。とくに拡大抑止の信頼性と関連してくれば、日本としてもオバマの核戦力更新計画を支持すべきです。

  
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