合意は、ウクライナの停戦のためのミンスク合意に似ている。2015年2月以降、全ての主要なロシア人、分離主義者の軍事的攻勢は停止させることになっていたが、ロシアは、紛争における交戦者でありながら、中立の第三者の地位を獲得、ウクライナ政府から譲歩を引き出すために軍事作戦の増強、縮小を繰り返している。
今般のシリアの「敵対行為停止」は単に失敗に終わるばかりでなく、非ISIS、非アルカイダのスンニ派反政府軍と大衆を疎外してしまうだろう。米国の安全保障上の重要な利益に沿った形での意味ある政治的解決は、彼らを頼りにせざるを得ないのに。
出典:Frederick W. Kagan & Kimberly Kagan,‘The Syrian ceasefire is a big win for Russia, Assad, and Iran’(American Enterprise Institute, February 12, 2016)
http://www.aei.org/publication/the-syrian-ceasefire-is-a-big-win-for-russia-assad-and-iran/
* * *
反アサド勢力を絶望に追いやる合意
2月11日の「敵対行為停止」合意は、良い合意として歓迎する向きも少なくありませんが、この論説が言うように、多くの欠陥があります。
ロシアの空爆やアサド軍の攻勢を止めたり、ヒズボラなどイラン関連勢力の手を縛るよりも、米国などが支持する反政府勢力の手を縛る怖れが大きいです。これは今回の合意について相談もされなかった反アサド勢力を絶望させることになるでしょう。
ロシアはテロリストへの空爆は続けると言っています。ロシアの言うテロリストには、イスラム国やアルカイダのほか、アサドに反対する諸勢力が含まれています。また、アサドは全国での支配の確立を目指すと言っています。
アレッポやその他での人道的危機を回避するために人道援助を届けるということは確かに良いことです。それが今後うまくいき、結果として停戦の効果が出るのであれば今回の合意は意味がありますが、そういうことになる可能性はあまりないように思われます。
ジョン・ケリー国務長官は、人道上の措置を徐々にとっていき、状況を転換することを狙っているのでしょうが、ロシアがアサド政権の再確立を目指していることをよく認識し、騙されないように注意深く対処するべきであると思われます。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。