2022年10月1日(土)

WEDGE REPORT

2016年3月23日

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アサドではなくシリアを守るため 
マキャベリスト的な考え

 ロシアの猛爆により戦況で優位に立ったアサド政権はロシアの軍事的な支援がこのまま続くと思っていたフシがある。アサド大統領は「シリア全土の再統一」を口にし、政権当局者も「大統領の地位については協議しない」とアサド氏退陣の可能性を一蹴するなどロシアの軍事力を当てにした強気の姿勢が目立っていた。

 しかし、ロシア当局者は最近「軍事介入はアサドを守るためではなく、シリアを守るため」と突き放した言い方をし、地中海沿いのシリア・タルトスにあるロシア海軍基地の維持という直接的な権益を確保した現在、アサド政権でなくても、親ロシア政権であれば容認するという考えを示唆していた。「邪魔になるようなら、いつでも切る」というプーチン氏のマキャベリスト的な考えがその根底にあるのかもしれない。

 ロシアの突然の撤退開始にアサド政権は「干された」(米紙)と感じ、政権を軍事的に支援するレバノンの武装組織ヒズボラの幹部は「ショック」と漏らしている。

 それでもロシアには全面的に撤退する考えはなく、プーチン氏も「数時間で再配備できる」と軍事プレゼンスの維持を表明している。ロシアのシリア投入の兵力は戦闘機、爆撃機など作戦機約50機、兵員約4000人だったが、これまでにロシアに帰還した作戦機は10機程度と見られている。

 ロシア軍機の出撃は撤退開始前は1日平均100回程度だったが、今は20回程度にまで減少。反体制派へ向けられていた攻撃の矛先は現在、過激派組織「イスラム国」(IS)に集中してきている。またロシアが配備した最新の対空システム「S400」は残されたままだ。

 ベイルート筋は「プーチンが獲得した利益とコストを天秤にかけ、今が一番と判断した結果。ジュネーブの和平協議を再開させたのはロシアという印象があるうちに撤退し、泥沼にはまるのを巧みに避けた」と指摘。「戦闘が続いている時に撤退するのは守勢に立たされてのもの。停戦の時に撤退するのは勝利」なのだという。

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