よくぞまあ、これだけネコの特徴を描いたものだと敬服するが、いままで知らなかったネコの身体的な特徴や能力なども含めて、詳しく解説されている。
日本人とネコという関係は、実に1400年前ごろにまで遡って始まるというのは個人的には大きなトリビアだ。現代の日本ではまったく想像できないが、ネズミを退治するという役割が本当に期待されていたのだからおもしろい。
ネコの能力に期待してきた人間
本書にも詳しく書かれているが、ネコのすぐれた身体能力というのも大きく関係している。時速50キロで走り、1.5メートルを跳ぶことができ、木にも登ることができる。嗅覚は人間の10万倍であり、夜行性の動物として、人間では見えないようなごく少ない光量の環境でも、いろいろなものを見ることができる。まさに狩りをするハンターとしての力が備わっているのだから、ネコにはネズミ退治どころではない力が期待されていたはずである。人間がそばにおいておきたい動物であることがよくわかる。
加えて、ネコが人間の病気の治療やさまざまな癒やしに役立っているという指摘は、本書で初めて知った。専門家の立ち合いで、病院や高齢者施設、学校などでネコの力を借りる取り組みが広がっているという。
人間の生活に身近な存在であるネコにこうした優れた能力が備わっていることは本書を読むまで十分認識していなかった。ただ、考えてみれば、長い年月をかけて様々な形で人間の生活にかかわり、人間もネコに愛情をかけてきた関係や歴史がある以上、ヒトの心を癒やすということも当然あるのだろうと思う。よく言われる「アニマルセラピー」という言葉以上に深い意味があると感じざるをえない。
世の中にはおそらく、あらゆるネコ関連の本が出版されているはずだが、ネコについてここまで分析的に書かれた本も珍しいのではないだろうか。そして「招き猫」のようなネコをめぐる歴史についてもしっかり言及されている。コンパクトながら読む人の好奇心を大いに満たしてくれる「すごい」一冊である。
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