だが、就任当初は自分がプレーできないだけに遠慮があった。本来ならキャプテンとして言わなければならないことも、「プレーしていないヤツに言われたくないと思われないだろうか」などと考えて、言葉を飲み込んでしまったこともある。
“捨て身になる”と腹くくる
けれど、新チームになってから「目標に向かって毎試合成長していけるチームになろう」と言ってきた。それには気が付いたことや、言うべきことはしっかり伝えなくてはチームの成長に繋がらない。信頼されたからこそのキャプテン指名だったはずだ。であるなら、自分がキャプテンとしてどう思われるかなど考える必要はない。車椅子だからといって、できない理由にはならない。功貴はさまざまな葛藤を抱えながらも、「捨て身になってやるだけだ」と腹をくくった。
「そんな思いが通じたのかもしれませんが、チームのみんなから『遠慮せんで、どんどん言ってくれ』と言われたので、僕も言いやすくなりました。みんなにはありがたいと思っています」
新チーム最初のヤマ場は2015年3月~4月上旬にかけて行われた「全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会」(埼玉県熊谷市開催)だ。
常翔学園のメンバーは車椅子を中心に円陣を組み、功貴はチームメイトを鼓舞した。試合中は声で仲間の背中を押した。
常勝学園は予選リーグを順調に勝ち上がったが、準決勝で同じ大阪地区の東海大仰星に「7-36」で敗れた。直前の近畿大会で敗れていた相手だけに、リベンジを果たせなかった思いは強かった。頂きへの道程の遠さを噛みしめ、全国選抜への挑戦は終わった。
『花園』3年ぶりの出場を果たす
最終的な目標は高校ラグビーの最高峰である「全国高等学校ラグビーフットボール大会」、通称『花園』で優勝することにある。
功貴はグラウンドでチームメイトを鼓舞する傍ら、繰り返し試合の映像を確認し、そのデータを基に分析するという「知」の面からチーム強化に貢献した。
大阪は全国一参加校が多く、まさに高校ラグビーのメッカと言える地域だ。予選は第1から第3地区に分かれて行われ、勝ち上がった3チームが大阪代表として『花園』への出場権を獲得する。どの地区もハイレベルの戦いの連続で『花園』への道は険しい。2012年に全国優勝を果たした常翔学園も、2年連続で『花園』への出場権を逸していた。