Wedge REPORT

2016年4月30日

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熊本地震における支援物資供給上の問題点

 今回見えた支援物資の供給における課題は5点だ。

 ①困難な状況でもプル型を実施

  例えば熊本市では、4月17日朝には避難者数が10万人を超え、道路を含むライフラインや自治体庁舎が甚大な被害を受けている状況が確認できている。この時点でも熊本市は、ニーズを把握して支援物資を各避難所に輸送するプル型を追求した。もし、この時点でニーズ把握の遅延、支援物資供給に従事する職員の不足、輸送の遅延等によってプル型が機能不全に陥ることを予期し、政府や県と調整してプッシュ型を実施していれば、その後の支援物資の不足や遅配が緩和できた可能性はある。

 ②プッシュ型の混乱

  4月19日にプッシュ型へ移行した後も、支援物資の受け手となる自治体や避難所と政府との間で支援物資の内容や輸送先に関する意思疎通が不十分だったり、受け手側の人手不足のために避難者への物資供給が滞ったりとの事例も見られた。こうした混乱は、平素から国と自治体との間でプッシュ型に関する業務要領の確認および実際的な訓練が不十分であったことを如実に物語っている。

 ③指定避難所以外への避難者のニーズ把握不十分

  熊本地震において被災直後に支援物資供給の遅延や不足が発生した一因は、被災当初、自治体が指定避難所への避難者を支援の対象とし、指定避難所以外への避難者を含めたニーズを把握しなかったことにあると考えられる。実際には、指定避難所以外への避難者が支援物資を求めて指定避難所に集まり、想定を超える支援物資ニーズが発生した。

 ④車両輸送の機能低下

  強い地震の直後には道路の陥没、家屋の倒壊、土砂崩れ、橋梁の落下、放置車両等によって多くの道路が通行不能となる。残った通行可能な道路には緊急車両や避難者の車両等が集中し、激しい渋滞が発生して支援物資の輸送に大きな支障が生じる。こうした事例は東日本大震災でも散見されたが、熊本地震でも同じ光景が繰り返された。

 ⑤支援物資供給に携わる職員・要員の人手不足・知見不足

  支援物資供給は自治体が日頃実施しない業務であり、これに習熟した職員は少ない。また、この業務は物資の荷卸し、仕分け、車両への積載等に多くの人手を要するが、被災自治体は避難所運営等の様々な災害関連業務に忙殺される。このため、災害時に支援物資供給に携わる職員が不足し、担当職員の知見不足と相まって業務が滞ることは東日本大震災での事例から明らかであった。また、東日本大震災では自衛隊、他の自治体、企業、NGO、ボランティアも支援物資供給を支援したが、被災直後には十分なマンパワーは確保できていない。熊本地震は、こうした問題への解決策が講じられない中で発生した。

 なお、著者が陸上自衛隊勤務間に従事した災害派遣で見たものは、自らの睡眠や食事の時間を削って避難者支援に没頭する隊員の姿であった。しかし隊員は、苛立った避難者の辛辣な言葉を浴びることもある。こうして、災害派遣が長期化すると心身に大きな負担が加わる。被災自治体の職員も同様である。支援物資供給を担う人たちが倒れれば、業務は遅延し、避難者に更なる辛苦を強いる結果となる。支援物資供給要領は、現場で業務に従事する人たちの過度な負担で成り立つものであってはならない。

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