Wedge REPORT

2016年4月30日

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災害時における支援物資供給のあり方とは 
今後を見据えて

 今後、災害時に的確に支援物資を供給していくには。

 ①ニーズ予測に基づきプル型かプッシュ型かを迅速に決定

  大規模災害であっても発生場所次第では被害が比較的少なく、大量の支援物資を必要としない場合もある。このため、発災後速やかに被害予測と災害が発生した季節・天候・時刻等を踏まえて避難者(指定避難所以外への避難者を含む)の数と属性ならびに必要となる支援物資の種類・量(ニーズ)を予測し、支援物資の備蓄量、輸送能力等を勘案してプル型かプッシュ型かを政府と自治体が協議して速やかに決定する仕組みが必要である。この際、決定を支援するためのデータベースの整備やソフトウェア開発は必須である。また、熊本地震では指定避難所が実態的には地域における支援物資配布所の性格を有していたことを踏まえ、ニーズ予測は指定避難所を中心とする行政区域単位で行うことが妥当であろう。

 ②海上輸送手段の充実

  被災直後には道路網が寸断され、陸上輸送に大きな支障が生じることは避けがたい。このため、陸上輸送を補完する航空・海上輸送手段の充実は重要である。この際、積載量100㌧程度の高速揚陸艇は、四面環海で多くの離島を擁する日本の国土において支援物資を被災地の小規模な港湾や海岸にも迅速に輸送可能で、河川や運河を用いた輸送にも対応できる。また、この種の高速揚陸艇は航空機(ヘリ)に比べて建造、運用、整備、乗組員養成等に係るコストが格段に安いことも魅力である。自治体や自衛隊が多数の高速揚陸艇を日本の沿岸各地に保持して即応態勢を維持しておけば、発災後における迅速な支援物資の輸送に大いに寄与するであろう。

 ③支援物資の備蓄拡充

  プル型にせよプッシュ型にせよ、災害用に備蓄してある支援物資を避難者に提供することは支援の迅速性の観点から重要である。とはいえ、指定避難所以外に避難する被災者を含む地域単位のニーズに基づく支援物資備蓄(三日分程度)の量は大都市では膨大となり、備蓄場所の確保が課題となる。この課題に対する一つの答えは、大型貨物船を活用した支援物資の船上備蓄である。日本各地の主要港に備蓄船を配置し、災害時には迅速に被災地の港湾あるいは沖合に移動させて積載した備蓄物資を車両、ヘリ、前述の高速揚陸艇等に積み替えて輸送する。これにより、備蓄場所の確保と海上輸送手段の充実の双方を期待できる。

 ④支援物資供給態勢の効率化・標準化および実際的訓練

  被災直後に支援物資供給に従事できる人数には限りがある。したがって、最小限の人手で実施可能な支援物資供給態勢を構築する必要がある。そのためには、支援物資の備蓄倉庫や一次保管場所から指定避難所に物資を直送し、荷卸し・仕分け・積載という人手を要する中間結節を極力設けないことが重要である。また、支援物資供給のマニュアルを整備するとともに、支援物資のニーズ予想・把握、在庫管理、輸送車両の運行管理等を人手に頼らず実施できるネットワークシステムを開発する必要がある。なお、こうしたマニュアルやシステムは、異なる自治体の職員等が容易に相互支援できるよう全国で標準化し、実際的な訓練を継続的に行うことが重要である。

おわりに

 今回の熊本地震は、支援物資供給の分野で見ると、政府・自治体の備えの不十分さを露呈した。振り返れば、新潟県中越地震(2004年)以降、最大震度6強以上を記録した地震が能登半島地震(2007年)、岩手・宮城内陸地震(2008年)、東日本大震災(2011年)、そして熊本地震(2016年)と頻繁に発生している。今後、最大震度6強以上の地震が発生する確率は高く、発生場所が大都市近傍であれば、膨大な避難者への支援物資供給が必要となる。政府・自治体が熊本地震での教訓を踏まえて支援物資供給のあり方を真摯に、かつ早急に検討することを強く期待する。

  
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