ジャーナリズムを大きな側面から分類すれば、報道と解説、そして評論となる。熊本県を中心として発生した広域の連続地震は、その影響がいまだに現在進行形であるから、報道機関は現地の報道すなわちルポと、地震の原因とこれからの広がりを含めた解説に力を注いでいる。
今回の地震を考えるうえで、NHKスペシャルが4月3日に東日本大震災後の地震研究の成果を振り返った「巨大災害 日本に迫る脅威~地震列島 見えてきた新たなリスク」が、災害報道の重要な試金石になったことに触れたい。
東日本大震災から5年を経て、日本の研究者の新たな挑戦をとりあげるとともに、東海地方から九州の太平洋岸に甚大な被害をもたらすことが想定されている「南海トラフ」地震がどのようなメカニズムで発生するのかという問題意識だった。
4つのプレートに分かれていると分析されていた九州
京都大学防災研究所の西村卓也・准教授は、GPS(全地球測位システム)の観測を活用することによって、地殻の変動を数値化して、地震発生のメカニズムを解明するとともに、次に巨大地震がどこで起きるのかを探ろうとしている。
巨大地震の発生は、プレートテクニクス理論によって説明されてきた。海側のプレートが陸のプレートに沈み込んでいくときに、徐々にひずみができてそれが耐えられない圧力となったときに、ずれが生じて地震が発生する。
日本の西日本の陸はひとつのプレートであるとされてきた。このプレートに海側のフィリピンプレートが沈み込むことによって、南海トラフ地震が発生すると推定されてきた。
西村准教授は、GPSの数値よって、陸のプレートがひとつではなく、九州は4つのプレートに分かれていると分析している。それぞれの分かれたプレートは違った方向に向かっているのである。大分地方は西へ、長崎と佐賀は南東へ、南部は南に動いている。