2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2016年4月21日

 地形の模型を使って、表面の地表の部分を取り除いて、地下に震源が集中している様子をわかりやすくみせている。地震は、まず比較的揺れの小さなP波が起きて、その後に大きな揺れを引き起こすS波が起きる。直下型地震では2の波の間隔が短く、緊急地震速報を出すP波の直後にS波がくるので、室内にいても避難の余裕がない。

 4月3日放送のNHKスペシャルに戻る。東日本大震災後の東北の沿岸部で異常な現象がいま起きている。地震によっていったんは1mほど沈下した地盤が、隆起しているのである。

マントルの動きが大地震もたらす可能性

 東日本大震災前から、海底などに水圧の測定機器を配置してきた、東北大学地震・噴火予知研究観測センターの日野亮太教授は、「想定と異なる別の地震の可能性」を指摘している。

 大震災前には、東北の陸と太平洋側の海のプレートは、西方向に移動していた。震災後は陸のプレートが東に向かうと推定されていた。しかし、この1年間のデータを分析すると、陸のプレートが西に向かっている。これが、地盤の隆起につながっていると、日野教授は推定している。

 これまで、ほとんど陸のプレート移動がなかった、ロシアの沿海州と中国の地盤も東にゆっくりと動き始めている。

 こうした現象の原因として、日野教授は東日本大震災によって急激に動いたプレートの下に対流しているマントルに原因がある、と考えている。マントルはゆっくりともとにもどる粘弾性を持っている。プレートの動きについていけずにゆっくりと動いているのではないか、というのである。

 地盤を隆起させるマントルの動きは、これまでとはまったく異なる大地震を引き起こす可能性もある。

 東日本大震災とその後の地震研究を、定期的にシリーズ化することによって、突発的な自然災害において視聴者に的確な情報を提供する底力を、組織ジャーナリストにつけている。

  
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