人と花の接点を増やす流通と小売りの現場
実は日本のカーネーション、半分以上が南米のコロンビアや中国から輸入されている。切り花の輸入割合はカーネーションで54%。全体でも24%を占める。一方、 国内の花き市場は縮小傾向にある。花き産出額は1998年の約6300億円から2013年には約3800億円に減少。花屋などの「花・植木小売業」の事業 者数は、この10年で約1・5万社(14年)と4割減少した。
花の良さを知ってもらうため、人と花の接点を増やそうと、流通や小売りの現場でも新たな動きが始まっている。広島市中央卸売市場中央市場花き部を運営する花満の和田由里社長。大正10年に創業の4代目である和田社長は、花き市場が縮小していくのを見続ける中で、「市場という『場』を提供するだけでは先細りを食い止めることはできない」と考えた。
ポット苗を室内でも楽しめるようにした資材を開発した生産者と共に販売したほか、「花と緑のコンシェルジュ」というウェブサイトを立ち上げて地域の花屋で働く男性を「活けメン」と名付けて紹介するなど、市場という立場を超えた活動を始めた。
今年1月には、Jリーグ・サンフレッチェ広島に働きかけ、チームに公式フラワーを採用してもらった。チームカラーの紫色をしたカーネーション「ムーンダスト」だ。生産するサントリーフラワーズの了解も取り付けた。公式フラワー認定を知らせるポスターを広島県花き商業協同組合と共に小売店向けに制作し、広島市の花屋に配った。「花に関心がない人でもサンフレッチェの花であれば買ってみようという人が増えれば」と和田社長。
東京・千葉に15店舗の花屋「オランダ屋」を展開するブルーミストの蓑口猛社長が、「店で待っているだけではダメ」と考えてはじめたのは、店の前を歩く人々に無償で花を配るというもの。これを「試飾(ししょく)」と名付けた。「やみくもに配るのではなく、花に興味のなさそうな人に絞ることがポイント」と、蓑口社長。花を飾ってもらい、次回の購買につなげる狙いだ。
このきっかけとなったのがある親子の行動だった。小さな女の子が「お花、お花」とお店の前にやってきたが、「花はいらないから」と母親が引き離そうとする。子どもは、なかなか母親の言うことを聞かない。仕方がないので、母親は渋々花を買って帰った。ところがしばらくして、その親子がお店を訪れ、今度は母親の方が「花を買っていこうか」と、積極的な姿勢に変わっていたのだという。