ロンドン市長選でEU離脱派の保守党ゴールドスミス氏が敗れたことは国民投票で残留派の追い風になるのだろうか。その後の世論調査を見ても残留派50%対離脱派50%のままピクリとも動いていない。離脱派の中心人物の1人、保守党のホックス元国防相は筆者に「ロンドン市長選の結果はまったく影響ない」と斬り捨てた。
英国政治に詳しいYouGov前会長ピーター・ケルナー氏が世論調査の結果を分析した興味深い資料をくれた。それによると離脱が残留を10ポイント以上上回るグループは60歳以上(26ポイント)、50~59歳(10ポイント)、中等教育かそれ以下(36ポイント)、熟練工か半熟練・非熟練工・失業者(20~26ポイント)、イングランド地方(10~18ポイント)。
これに対して、残留が離脱を10ポイント以上上回っているグループは18~29歳(46ポイント)、30~39歳(24ポイント)、大学卒業(40ポイント)、大学入学資格Aレベル(16ポイント)、管理職・専門職(10~24ポイント)、ケルト系言語の話者が多いスコットランド地方と北アイルランド地方(26~30ポイント)、ウェールズ地方(10ポイント)、多文化・多民族のロンドン(16ポイント)。
白人、高齢者、低所得 離脱派を読み解くカギ
英国が完全に二極化している現実をEU国民投票は図らずも浮き彫りにしてしまった。離脱派を読み解くカギは高齢者か低学歴、ワーキングクラスか失業者、そして「ホワイト・イングリッシュ」すなわち白人のイングランド人だ。米大統領選の共和党候補者指名争いでトランプ氏が「白人」「男性」「怒り」を原動力にしたように、EU国民投票でも離脱派が予想以上の勢いを見せる。
「半年前なら残留の可能性が90%と断言できました。今も、最もあり得るシナリオは残留に変わりありませんが、離脱は現実的な選択肢になってきました。米国のトランプ現象と同じように反エリートを唱える白人ナショナリストの逆噴射が欧州にも広がっています」と前出のケルナー前会長は解説する。