2024年7月16日(火)

WEDGE REPORT

2016年5月31日

昨年開催されたTED カンファレンスではGoogleの自動運転開発責任者、クリス・アームソン氏が登壇。TEDのHP上ではこの際の映像が確認でき、Googleの自動運転開発の状況が一目でわかる。日本語版も閲覧可能(http://www.ted.com/

ソフトウェアは競争領域
ようやく認識した日本

 トヨタは1月、AIの研究開発を行うTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)を設立した。

 方向性としては正しいが、製造業のど真ん中を走ってきた日本の自動車メーカーが、これからいかにソフトウェア技術においてGoogleをキャッチアップし追い越し得るのか。高い壁であることは間違いない。

 自動車メーカーだからこそ、膨大な実験のデータは得られるだろう。車載センサー、地図、走行用ソフトウェアの開発を全て自らやろうとする発想を否定はできない。しかし、これから世界中で独自の地図を作成しメンテナンスすることなど、経済性から見てもコストが合わない。大きく先行するGoogleよりも効果的なディープラーニングが行えるかも疑問だ。

撮影:生津勝隆

 Googleは走行アルゴリズムを開発するために、「三次元地図」と呼ぶ詳細な地図情報を自ら開発して利用している。三次元地図は車載センサーが得た情報を照らし合わせるため、道路の勾配やカーブの角度などをデータとして持つ。しかし、IT的な発想からすれば、Googleは今後どんな第三者から新たな三次元地図が出てきても、ソフトウェア自体に手を加えずに例えばデータ形式の変換のみで、自動運転が行えるよう開発を進めているはずだ。

 彼らの作るソフトウェアは自分自身の地図や相手のハードに縛られることなく利用できる形式になっているだろう。つまり、コンピューターが言った通り正確に走れるクルマを自動車メーカーが造れば、そこにGoogleのソフトウェアを載せて一足飛びに自動運転領域で名を上げる可能性がある。

 フォードが1月に公開した雪道での自動運転の実験動画は、Googleに近い自動運転技術を使ったものだった。

 自前技術に固執している時間はない。協調すべき領域は積極的に協調し「クルマが自ら運転する」、自動運転時代にふさわしい自動車開発に向けて、自社の優位性が発揮できる競争領域に集中し進んでいかなければ、自動運転領域で日本の自動車メーカーは国際競争力を失いかねない。

 現在発売中のWedge6月号では、「自動車産業が壊れる日」と題して、米国の自動運転開発や次世代カーシェアなどについて、現地ルポを行い特集しています。
■特集「自動車産業が壊れる日 自動運転の“先”にある新秩序」
・米国総力取材 IT企業が先行する自動運転 崩れる自動車業界の力関係
・自動車メーカーは置き去り Googleが目指す完全自動運転
・欧米自動車メーカーが続々参入 なぜいまカーシェアなのか?

  
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