――昔も今もタイプは違えど、社会や大人に対して不信感を持っていたり、反発心が根底にあると思うのですが、入院当初はどのような態度を示しますか?
入りたての子にはいくつかのパターンがあると思います。
1つ目ですが、少年院の中では自分の心の中はひとまず置いておいて、「はい、はい」「先生のおっしゃる通りです」と職員の言う事をよく聞いて早く出ようとする従順な態度を見せる子ですね。少年院まで来てしまったら反抗してもムダと思ってそうするのだと思います。
次に反発を露骨に示して「大人のやることなんて……」という目つきをしている子です。緊張感とか強がりから、そうした態度を見せる子は多いですね。目を吊り上げて「俺のことなんてわかるわけないだろ」と思っている頑なな態度です。
でも、職員との間が打ち解けてくると自然に目じりが下がってくるものです。家族が面会にくると、「あれ、昔の顔に戻ったね」なんて言う親御さんもいます。自分では変わったことに気づきませんからね。
人は心が落ち着いてくると顔に出ます。特に目に表れます。ここに馴染んできて、人間関係で安心してくると全体的に穏やかな表情になってきます。
暴走族のような反社会的な子と、周囲と孤立しがちな非社会的な子ですが、タイプは違っても、真逆な子たちではないんです。昔も今も自分のことを気にしてくれる相手には心を開いていきます。
――心を開かせる要諦はどのような点にあるのでしょう。
常日頃から彼らの言動をよく見て、根気強く声を掛け続けて、少しの変化も見逃さないことが大切です。その変化がどれだけ小さくても見逃さないことです。
どんな人でも、何か変わったことがあったときに、周りがそれに気が付いて声を掛けられると嬉しいですよね。彼らの場合は特にそういったところを見逃さないことが大事なんです。
常に見ているよ、気にしているよ、ということを感じさせることが彼らの心を開かせる大切な一歩です。
また、前に約束したことを覚えていることも重要です。たとえそれが、小さなことだったとしても大切なことです。
「この先生はあのときの約束を覚えていてくれた」となりますよね、いくら我々が正しいことを言っても、偉そうなお説教をしても、信頼関係ができていなければ彼らの胸には入っていきません。
あまりにも、気にしているよ、見ているよ、が強いとあの年頃の子たちは嫌がりますけどね。でも、そうしたメッセージを送り続けることが大切であることは確かです。