2024年4月20日(土)

ルポ・少年院の子どもたち

2016年6月15日

 しかし、ここに入ってくる子たちは、わからなくなったときに、そのまま放りっぱなしにしてしまったような子が多いと思います。その原因は身近に聞く人がいない場合や、色々な理由から、自分から聞こうともしなかった。または、発達障害もしくはそれに近くて勉強が遅れてしまうケースなどがあります。

 授業を聞いてもわからないものだから、一人で教室を出て行ってしまったり、暴れたり、普通の子たちが我慢できることができない。そうして敬遠されるようになっていくケースも多いです。

 ここに入ってから「そのままにしないで頑張ってみれば良かった」と振り返る子がとても多いです。

――運動部からドロップアウトしていくケースもあるとお聞きしています。

 スポーツ推薦で高校に進学するのですが、監督と合わなかったり、怪我をして下級生にポジションを取られて、腐って辞めてしまったというケースが多かった時代もあります。

 スポーツ推薦で進学するような子は小さいころからスポーツ漬けで厳しい生活をしていますから、怪我で少し離れると周りが楽しそうに見えてしまうのでしょう。ポジションを取られた悔しさよりも、楽な方を選んでスポーツから離れていってしまう。こういう子たちは強豪校ばかりで、やはり、ここに入ってきてから「あのときにもっと頑張っていたら違っていたはずなのに」と後悔しています。ここに来てから気がついても遅いのですが……。

 ただし、運動部でドロップアウトした子たちは信頼関係を築きやすい子が多いように思います。集団生活も得意ですし、こちらの意図もしっかり汲み取ることもできます。逆に信頼関係が築ければ、我々のためにもがんばっちゃう子たちもいました。市原学園は短期処遇少年院なので、非行の進行の程度はそれほど進んでいませんので、こういう子たちは軌道修正ができれば社会に出てから頑張る子たちです。

――少年犯罪が起こる家庭環境に何か特徴的なものはありますか?

 最近の傾向としてごく普通の家庭の子たちも多いということです。特別に問題がある家庭ではないんです。あとは両親が揃っていなかったり、お母さんが外国籍の方だったりするケースも一般的な割合よりも多いように感じます。あとは貧困家庭や、親御さんが精神疾患を患っていることもあります。

 いつの時代も家庭が落ち着かないと外に、外に目が向いてしまうんだと思います。非行を肯定するわけではありませんが家庭が安らぐ場ではないのですから、仕方がないかもしれません。

 最近の傾向では親がしっかりしているから大丈夫なんてことは絶対にありません。子どもには子どもの世界があって、親の知らない交友関係がありますからね。


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