世界の記述

2016年6月13日

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大西康雄 (おおにし・やすお)

科学技術振興機構・中国総合研究・さくらサイエンスセンター・特任フェロー

1977年早稲田大学政治経済学部卒、アジア経済研究所入所。駐中国日本大使館専門調査員、中国社会科学院工業経済研究所客員研究員、アジア経済研究所地域研究センター長、JETRO上海センター所長などを歴任。

 さらに5月には、全国10都市の国家級・省級・市級の国有企業100社のサンプル調査や各地の違法処罰件数、行政訴訟件数などを中心に行われた総合的実態調査の結果が公表された。

改善されつつある従来の環境保護行政

 そこから新法による行政措置全体の構成を見ると、①「日割りの追加罰金」が6%、②封鎖・差し押さえが36%、③生産の制限・停止が26%、④行政拘留が18%、⑤案件の公安機関への送致(書類送検に相当)が14%など違法行為に対して強い措置が取られたことがわかる。ちなみに、それぞれの実件数を見ると、①が715件、罰金額5.69億元(約108億円)、④が2079件、⑤が1685件。また、生産の制限・停止措置の地域分布を見ると、浙江省が594件と突出しており、ついで湖南省396件、広東省286件、江西省256件などとなっている。

 こうした数字を見る限り、「罰金を払ってでも違法を続けた方が得」と揶揄されてきた従来の環境保護行政の弱点は克服されつつあるように見える。それでも上記調査結果自身が、全国の状況を見れば法の実効性はまだ不十分で、環境保護に直接関連する法制と執行体制だけでなく、関連する行政機関による監督の強化が課題だと分析している。

 さらに、調査にかかわらなかった環境学者からも、起こされた環境訴訟が全国でわずか53件しかないことからわかるように一般国民の環境意識がまだまだ高まっていない、といった問題点が指摘されている。わが国では、多くの環境訴訟が争われる中で社会全体の環境問題に対する意識や倫理観が高まっていった事実がある。中国においても、厳格な法制に加えて、さらにその実効性を保障する多元的メカニズムの構築が求められているといえよう。

  
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