一方、アキノ現政権の与党自由党からもPDPラバンへくら替えを表明する議員が続出した。自由党のベルモンテ下院議長はこの動向について「地元における開発事業予算枠の確保や(議会における委員長などの)ポジション獲得を目的にくら替えをしている」と説明した。フィリピンでは過去の大統領選でも同様の理由から、大統領の所属政党に他党議員が雪崩れ込むようにくら替えする動きが見られた。
この結果、ドゥテルテ次期政権の与党陣営が下院で過半数を占めるのはほぼ確実な情勢となっている。上院(24議席)では4人の候補者が議長就任を狙って票集めをしており、議員の取り込み合戦が続いている。
公約の実効性は不透明
ドゥテルテ氏はこれまで ①麻薬密売犯などの犯罪組織と汚職の撲滅 ②死刑制度の復活 ③反政府武装勢力との和平合意 ④交通渋滞の解消 などを重要課題に掲げ、多数派工作による与党陣営の勢力拡大でこれら公約を実現したい考えだ。
だが、超法規的殺人の正当化や死刑制度の復活については人権団体などから非難が相次いだ。ダバオ市の治安を改善した実績を持つドゥテルテ氏でも、公約に掲げた「6カ月以内の犯罪組織撲滅」という短期間の施策は非現実的だ。交通渋滞の問題も、首都圏では人口過密と自動車増で悪化の一途をたどっているため、一筋縄ではいかないだろう。