これに対し中国政府が猛反発している。CRIの親会社でもある中国鉄道国際は契約破棄のニュースに対し「重大なミステイクであり、無責任な行動」と批判。「まだCRIとエクスプレス・ウエストとの交渉が続いている段階で、一方的に契約終了を発表したことは契約違反であり、今後法的手段に訴える」とヒートアップ。
一方のエクスプレス・ウエストは「CRIとの契約は終了したが、高速鉄道を諦めるつもりはない」と早くも次の段階に着手している。中国からの融資、というオイシイ話がなくなった現在、まず必要なのは資金の手当てだ。
ウルトラCが登場?
そこでウルトラCが登場するかもしれない。なんとエクスプレス・ウエストは北ラスベガスにテストレーンを設置した、ハイパーループ・ワン(旧社名ハイパーループ・テクノロジー)と協議を行った、というのだ。
ハイパーループとは、テスラCEOイーロン・マスク氏が考案した「鉄道よりも大幅に安く高速移動が可能になる乗り物」のこと。チューブの中に磁気とエアシューターによって時速800キロで移動するカプセルを浮かせ、人や物を運ぶ、というものだ。マスク氏によると「ロサンゼルスーサンフランシスコ間を30分で移動できる。建設費は80億ドル(カリフォルニア州の高速鉄道計画事業費は10倍以上の860億ドル)」という。
このマスク氏のアイデアに沿い、独自にハイパーループを建設、実験しているのがハイパーループ・ワンだ。実験設備がラスベガスに近いこともあり、建設コストの少なさ、「米国産」であるため連邦政府の規制にも引っかからない、など、もし実現できるならばハイパーループは未来の高速鉄道事業を根本から変える存在になるかもしれない。
エクスプレス・ウエスト側は「あくまでも地上の線路による高速鉄道を計画している事実に変わりはない。しかしあらゆるオプションを検討すべきだと考える」とハイパーループとの協議について語っているが、その詳細は明らかにされていない。
世界初のハイパーループがネバダ州で建設されることになるのか、あるいは日本など他国の鉄道システムが導入されることになるのか。それともエクスプレス・ウエストの計画そのものが白紙撤回される結果となるのか。そして中国側の今後の出方は、など、今後の展開に注目が集まる。
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