中国は現在積極的に世界の高速鉄道建設に乗り出しているが、米国での計画に黄信号が灯った。
昨年9月、ネバダ州ラスベガスに本拠を置くエクスプレス・ウエスト社と中国国営鉄道企業の米国子会社である中国鉄路国際(CRI)の間にラスベガスーロサンゼルス間の高速鉄道建設に関する契約が結ばれた。内容は総工費80億ドルのうちCRIが1億ドルを初期投資、その後鉄道建設、車両納入、運営、さらには融資に至るまでをCRIが請け負う、というものだった。
突然白紙に戻される
今年9月から着工が発表されていた計画が、突然白紙に戻された。エクスプレス・ウエストCEO、トニー・マーネル氏は声明の中で「連邦政府による認可を取得するのが困難なこと、中国側が期日通りに計画を進めることに支障を来していること」の2点を契約破棄の理由に挙げた。
鉄道事業には通常州政府の認可と連邦政府の認可、双方が必要だ。高速鉄道計画の場合、連邦政府が全米を網羅する鉄道網を計画、ラスベガスーロサンゼルス間の高速鉄道は将来カリフォルニア州の高速鉄道、さらにはアリゾナ州までを結ぶ「米南西部」の第三フェーズに組み込まれている。州間事業となるため、連邦政府の認可が必要となる。
ネバダ州は昨年11月すでに鉄道計画を認可、建設へのゴーサインを出した。しかし連邦政府は「高速鉄道車両は米国内での生産に限定する」という規制方針を打ち出した。現在、列車生産を行う米企業はない。つまりCRIが現地法人として米国内に生産拠点を持ち、輸入ではない国産として列車を製造できなければ計画は前に進めないことになる。
州内のローカル列車やアムトラックでは日本製、ドイツ製、イタリア製、スペイン製、カナダ製の車両がすでに導入されているが、これらは現地法人で現地生産の体制が整っている、あるいは連邦政府による特例が認められている。しかし比較的新規の中国企業に対し、こうした特例が認められる可能性は低い。
より大きな問題は、エクスプレス・ウエストが中国側に対し不信感を抱き始めた、という点にある。同社はCRIについて「タイムリーに、かつ効率的に作業を進める能力に欠く」と批判。「将来CRIが米国内においてある程度の成功を収めるだろう、と予想はするが、現時点でエクスプレス・ウエストの事業スピードには合致しない」としている。また、昨年9月の契約当初はCRIとのみ、だったものがCRI側がその後関連中国企業との連携、合併などを強めたことで、連邦政府の認可を取るのが困難になった、とも述べている。